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【中の人不定期コラム】vol.7 InDesignで日本語組版の深淵を覗く。

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InDesignを習っている。
念のために書いておくと、InDesignというのは文書レイアウトソフトで、世の中の多くの本(書籍を含めたページものの印刷物)はこのソフトで作られている。

InDesignはPhotoshopなどと違って「実戦」がないと、なかなか使ってみるチャンスがない。かと言って、いきなり実戦が来ても「なんとなく使えてしまう」というソフトでもない。ということで使う機会がなかったのだが、思い立って習ってみることにした。人にソフトの使い方を教わるのは初めての体験で、それもちょっと楽しんでいる。

で、その過程でInDesignによる日本語組版も習っている。習っているといってもその奥深さの淵で、そっと底を覗いているくらいなのだが。
レイアウトを設定し、フォントを決め、文字組を設定して文章を流し込む。全体を眺め微調整をしていく。作業をしながら、ああ、日本語って美しいな、と思う。

家の本棚にある各出版社の文庫本を取りだして比べてみる。各版元さんで微妙に違う。多分、発刊時期によっても、ストーリーの長さ、内容によっても違うだろう。「同じ判型で文字が並んでいる」だけと思っていた文庫本ですら違う。もちろん単行本は一冊一冊、個性に溢れた組み方だ。

ページが焼けた昔の(DTP化以前の)文庫本を開いてみる。あれっと声が出てしまうほど今と違う。今の時代、これほど小さい級数で行詰めをした文庫は見かけない。

日本語組版の用語と定義を知り、徐々にInDesignの使い方に慣れていくに従って、今まで漠然と感じていた文字組みの美しさや読みやすさの(そしてまたその逆の美しくなさや読みにくさの)輪郭が、おぼろげに姿を現した。

私は本が好きだ。本が好きってどういうことだろう。その中に収められた世界が好き。その世界を表現した表紙デザイン、装丁が好き。そしてそこに「美しい日本語組版」が好きという、今までは漠然としていた定義が、輪郭を伴って加わった。

epub(電子書籍用ファイル)は何度か組んだことがある。「これはこんなもん」と納得していたけれど、こうやって日本語組版の世界を垣間見ると、epubの表現力は味気ない。電子書籍と、美しく組まれて印刷された本は読書体験として異質のものだ。

青山ブックセンターさんでは組版に関するイベントを定期的に開催している。たとえば、こんなのとか。

ABCでabcを語ろう! TypeTalks 第34回 初公開! 岩波書店の組版ルール 書籍組版は「いい加減」がいい加減!?

ヨーロッパの美しい本と組版 ドイツ在住のタイポグラファーに聞く組版事情

まだ私には手が届かない世界だが、もう少しこの世界を勉強してみたいと思う。
自分の本を自分で組む、というのは夢として悪くない気がする。商業出版では難しいかもしれないが、書き散らかした実名で出しにくい原稿(どんな原稿だ?w)を同人誌として組んでみるというのは楽しそうだ。

(2016.11.24)

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