2015年11月23日(月)

ラスト・ソング 人生の最期に聴く音楽 〜音楽を聴きながら考える、人生の大切なこと〜

天狼院STYLE表参道
イベント開催日: 2015年11月23日(月) 10:30〜

「私の小さい時 ママに聞きました
美しい娘になれるでしょうか
ケ・セラ・セラ
なるようになるわ 先のことなど
判らない 判らない」
(作曲:J.Livingstom 作詞:R.evans・訳詞:音羽たかし 歌手:ペギー葉山 ケ・セラ・セラより)

祖父はいつも歌っていました。

福岡に住んでいた私たち兄妹は、春休みに横浜に住む祖父母の家に遊びに行くのを毎年楽しみにしていました。
横浜駅のそごうのレストランでレモンスカッシュを飲み、そして夕飯はお寿司の出前を取るというのが到着した日の定番でした。

小学校の4年生頃までは、絵を書くのが好きだった祖父と一緒に絵を描いたり、細かい手仕事の好きな祖母に刺繍を習ったり、歳の近い従兄妹たちとみんなでカードゲームをしたりの毎日でした。
大きくなると、横浜中華街に行ったり、ランドマークタワーに登ったり。
横浜港に停泊する日本丸を見たこともありました。
そして中学生になり、3つ年下の妹の手をひいてドキドキしながら原宿の竹下通りを歩きました。

そんな中でもずっと変わらなかったのは、朝一番のガラガラという雨戸を開ける音と毎晩ビールを飲みながらピーナッツを食べる祖父の姿。
私たちが泊まっていた2週間ほどの間に、必ず一度は「王様と私」を見る祖父は、音楽と、絵と、ダンス、表現することをこよなく愛していました。

そしてもう一つ、ずっと続いていたのが、近くの公園に祖父と散歩に行くことでした。
丘の上にあるその場所に行く道すがら、祖父はいつも歌っていました。

「ケ・セラ・セラ
なるようになるわ 先のことなど
判らない 判らない」

英語の教師をしていた祖父は上機嫌になると英語で歌を歌い始め、私もそれに合わせてなんとなく英語を真似た歌をくちずさむこともありました。
そんな祖父が80をすぎても通い続けていたダンス教室の帰りに行方不明になったと連絡を受けたのは私が大学生のとき。
高校生をすぎ、春休みに遊びに行くことがなくなってから、すでに何年も経っていました。

その後、祖父母は福岡の私の両親の家の近くに引越をしてきました。
小さいけれど庭のあるマンションの一階で数年間暮らし、それから近くの老人ホームに入り、そこで数年間をすごし、その後入院した病院で祖父は息をひきとりました。

親戚だけでひっそりと行われたお葬式。祖父が愛したものたちで送り出したいと父や伯父・叔母が選んで流していた曲の中に「ケ・セラ・セラ」がありました。

私は今でも散歩をするときにひとり口ずさむことがあります。
「ケ・セラ・セラ なるようになるわ 先のことなど 判らない」

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天狼院STYLE表参道の夏川です。
「ミュージックセラピスト(音楽療法士)」という仕事を、聞いたことがあるでしょうか?
佐藤由美子さんは、アメリカのホスピスでと10年間に渡り、音楽を通して死期の近い患者さんやその家族に向き合ってきました。

彼女が実際に出会った人々とのエピソードを記した「ラスト・ソング 人生の最期に聴く音楽」を読み始めたとき、私は、数年前に亡くなった祖父のことを思い出しました。

そしてこのことばに、救われた気がしました。

聴覚は最期まで残る感覚である(「ラスト・ソング 人生の最期に聴く音楽」P.10より

ベッドで目を閉じていても、毎日祖父に話しかけていた父の声が、母の声が、たまに行く私の声も、そして長年暮らした横浜と同じように聞こえる病院の少し先の波の音が、祖父にはきっと聞こえていたのだと。

たくさんの人の人生を見送ってきた佐藤さんは言います。

私は、本当にたくさんのことを患者さんから教わった。私が彼らに与えたものよりも、彼らから受けとったもののほうがはるかに多い。これまで紹介してきた通り、患者さんにはひとりひとり、人生のストーリーがある。幸せなストーリーもあれば、悲しいストーリーもある。しかし、それがどんなストーリーであれ、彼らの人生から学ぶことがあり、それが自分自身の人生に大きな影響をおよぼしてきた。
(「ラスト・ソング 人生の最期に聴く音楽」P.186より)

そんな佐藤さんを、このたび天狼院STYLE表参道にお招きすることになりました。

患者さんやその家族とすごしてきた時間、そこにあるストーリー、そこで感じたこと、そしてそこから学んだこと。
当日は楽器の演奏と歌を交えながら、佐藤さんの体験や想いについてお話いただきます。

あなたは、どんな思い出の歌がありますか?
慌ただしい師走を迎える前に、少し立ち止まって自分自身の人生や大切なひととの時間に思いを馳せてみませんか?優しい音楽が、あなたをお待ちしています。

【概要】
日時:11月23日(月・祝)
10:00 開場・受付開始
10:30 開始
12:00 終了
参加費:3,000円
* 加えて「ラストソング」をご購入ください。
(事前に購入された方は当日書籍をお持ちください。)

定員:30人
場所:天狼院STLYE表参道 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-9-8
会場は表参道になりますのでご注意ください。

【お支払い方法】
「Peatex」による事前決済制(当日お席がございましたら店頭お支払いも受け付けさせていただきます。)http://peatix.com/event/126184/

【プロフィール】
佐藤 由美子(さとう ゆみこ)
ホスピス緩和ケアを専門とする米国認定音楽療法士。バージニア州立ラッドフォード大学大学院音楽科を卒業後、オハイオ州シンシナティのMusic Therapy Servicesに所属し、ホスピスで10年間音楽療法を実践。2013年に帰国。帰国後は青森県在住。15年8月からは青森慈恵会病院の緩和ケア病棟で音楽療法士として働いている。米国音楽療法学会誌“Music Therapy Perspectives”やオンラインジャーナル“Voices, A World Forum for Music Therapy”にて音楽療法に関するさまざまな論文や記事を発表。アメリカの学会で講義を行いつつ、地域ではドラムサークル、グリーフケア、ホスピス緩和ケア音楽療法など、さまざまなトピックに関するワークショップを行ってきた。著書に『ラスト・ソング』(ポプラ社)がある。
ハフィントンポスト(日本版)でBlog「佐藤由美子の音楽療法日記」掲載中。
http://yumikomusicjp.wordpress.com/

【天狼院STYLE表参道へのお問い合わせ】
お問い合せフォーム
TEL:03-6914-3618

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