2014年9月25日(木)

『神曲』(全3冊)新訳刊行記念 訳者・原基晶×安田登「あたらしいダンテがあらわれた」

この夏、3ヶ月に渡り刊行された、原基晶氏による新訳ダンテ『神曲 地獄編』『神曲 煉獄篇』『神曲 天国篇』。

原典に忠実かつ詳しい解説がついたこの労作から、今まで見えてこなかったダンテ像が浮かび上がります。

待望されたこの本の完結を記念し、訳者の原さんと、聞き手には能楽師の安田登さんをお招きしてトークイベントを開催いたします。

能楽師・ワキ方としてあらゆる活動をなさっている安田さんはあたらしい『神曲』をどう読まれたのか。そして原さんはどのように考え、新訳を世に問うたのか。

『神曲』世界への導入としてもぴったりのお話となることでしょう。

イタリアの生んだ最高の詩人ダンテが14世紀初めに著した『神曲』は「地獄篇」「煉獄篇」「天国篇」の3篇からなり、さらに各篇は33歌からなりますが、「地獄篇」冒頭に置かれた三篇の全体の序歌を加えれば、合計100歌となります。詩型は三行一連で全体では1万4233行におよび、文学、美術、現実の政治等に多大な影響を与えた、キリスト教文学の最高峰とされる叙事詩です。

主題は生身の存在であるダンテが、地獄、煉獄、天国の三界、すなわち彼岸の世界を遍歴した末に、ついには神との出会いを果たすというところにあり、歴史的事実を死後の世界に投影した詩を通じて、人類に正しい道を指し示そうとした作品です。

『神曲』には主だったものだけを挙げても、すでに山川丙三郎(岩波書店)、平川祐弘(河出書房)、寿岳文章(集英社)らによる邦訳がありますが、あるものは翻訳の底本が不分明であったり、訳文が現代の読者には難解すぎたり、文章の流れに重きを置きすぎるがために原典に忠実でなかったり、キリスト教世界を描くのに仏教用語を多用して違和感を与えたりと、それぞれに難点がある。これらを克服するために、本訳ではテクストの安定性や信頼性で評価の高いペトロツキ版(1968年刊)を訳出の軸として、原典に忠実でありながら、平明な表現を心がけました。加えて読者の便宜を考慮し、訳注は可能な限り、当該の見開き内に収めました。訳注、各歌解説には、世界的ダンテ学者として名高い故ジョルジョ・パドアンに師事した訳者、『神曲』研究の最先端の成果を盛り込んでいます。
ダンテ『神曲』の訳本の決定版です。

 

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