2017年7月2日(日)

「津島佑子の時代がはじまる」 石原燃 × 星野智幸 トークイベント 「津島佑子コレクション」(人文書院)刊行開始記念

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やわらかい光のなかで母の声が響く。

この世界には言葉が溢れてる。人はその言葉に身を浸すことで喪失の恐怖から逃れようとするけど、そこに身を浸している限り、決して聞くことのできない声というものがあるのよね。

青いテーブルクロス。白い皿。りんごの皮。

母の声はくっきりと、速度をあげて、途切れることなく、歌になる。

―石原燃氏「人の声、母の歌」(『悲しみについて』所収)より

津島佑子さんが亡くなってまもなく1年半。彼女が紡いだ物語は今も多くの人の心を捉え続けています。津島さんの長女で、コレクション第一回配本『悲しみについて』にエッセイを寄せられた石原燃さんと、長年親交があった作家の星野智幸さんに、津島さんが一個人として社会にどのように向き合って来たかに触れながら、『悲しみについて』を中心にお話しいただきます。

石原燃
東京都出身。非戦を選ぶ演劇人の会実行委員。2010年、『フォルモサ!』が劇団大阪40周年戯曲賞にて大賞受賞。12年、『人の香り』が第18回劇作家協会新人戯曲賞の最終候補作、『父を葬る』が第24回テアトロ新人戯曲賞佳作となる。その他の作品に、3.11後、NYの演劇人が立ち上げたチャリティー企画「震災 SHINSAI:Thester for Japan」で上演された短編『はっさく』、死刑問題を取り上げた『沈黙』、NHK番組改変事件を題材にした『白い花を隠す』などがある。

星野智幸
アメリカ・ロサンゼルス市生まれ。1988年、早稲田大学卒業。2年半の新聞社勤務後、 メキシコに留学。97年「最後の吐息」で文藝賞を受賞しデビュー。2000年「目覚めよと人魚は歌う」で三島由紀夫賞、03年『ファンタジスタ』で野間文芸新人賞、11年『俺俺』で大江健三郎賞、15年『夜は終わらない』で読売文学賞を受賞。『星野智幸コレクション』全4巻、『呪文』『未来の記憶は蘭のなかで作られる』 など著書多数。

概要
日程:2017年7月2日 (日)
時間:14:00~15:30 開場 13:30~
料金:1,350円(税込)
定員:110名様
会場:本店 大教室

お問合せ先
青山ブックセンター 本店
電話:03-5485-5511
受付時間:10:00~22:00

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書籍情報
「津島佑子コレクション」第Ⅰ期
人文書院

津島さんは亡くなった今でも、
吹き荒れる言葉の暴力に、小説の言葉で戦い続けている。
その言葉を使うのは私たち読者の役割だ。

―星野智幸氏

『狩りの時代』などの遺作を通じて、日本社会の暴力的なありように対して根本的な問いを投げかけた津島佑子さん。家族の生死と遠い他者の生死とをリンクして捉え、人間の想像力の可能性を押し広げていったその著作は、全体が一つの壮大な「連作」を構成しています。コレクションの第Ⅰ期では、彼女の人生に大きな影響を与えた長男の死を主題にした「三部作」及び、その後の黄金期に書かれる代表作二作を並べました。津島作品は初めてという方にも、その根幹に流れるものを共有していただければ幸いです。

◎第一回配本……2017年6月
『悲しみについて』 解説:石原燃

1985年の春、その人は息子を失った。そして絶望の果てに、夢と記憶のあわいから、この「連作」を紡ぎはじめた。彼女は何を信じ、何に抗いつづけているのか。聞き届けられるべき、不滅の物語。

◎第二回配本……2017年9月予定
『夜の光に追われて』 解説:木村朗子

あなたはなぜ書いたのか、一人で子を成す孤独を。あなたも知っていたのか、子を奪われる苦しみを。千年の時を超え、平安時代の王朝物語「夜の寝覚」の作者とともに、人間の幸福の意味を問いかける名著。

◎第三回配本……2017年12月予定
『大いなる夢よ、光よ』 解説:堀江敏幸

息子を見失ったその人は、それでも夢をたゆたい記憶を辿りながら、共に過ごした時間のあの喜びを見届けてくれる存在を求めつづけた。囚われなき情愛を通じて、人生を再び歩み始めるまでの道程を描く傑作。

◎第四回配本……2018年3月予定
『ナラ・レポート』 解説:星野智幸

母を失くした居場所なき少年は、この世の権威を憎んでいた。その象徴を破壊したとき、男たちが作り上げた正史の余白から、いかなる物語が流れ出るのか。時空を超え、生と死の境に降り立つ未踏の日本文学。

◎第五回配本……2018年6月予定
『笑いオオカミ』 解説:柄谷行人

父と墓地に暮らす少年は、ある夜、男女の心中を目撃した。数年後、少年は死んだ男の娘を連れて列車の旅に出る。二人の眼に映る、敗戦下の日本とは。生を奪われた無数の子どもたちに想いを馳せ描く冒険譚。

【著者紹介】
津島佑子
1947年、東京都生まれ。白百合女子大学卒。78年「寵児」で第17回女流文学賞、83年「黙市」で第10回川端康成文学賞、87年『夜の光に追われて』で第38回読売文学賞、98年『火の山―山猿記』で第34回谷崎潤一郎賞、第51回野間文芸賞、2005年『ナラ・レポート』で芸術選奨文部科学大臣賞、第15回紫式部文学賞、12年『黄金の夢の歌』で第53回毎日芸術賞を受賞。2016年2月18日、逝去。

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