2018年3月13日(火)

アキール・シャルマ × 小野 正嗣トークイベント「祈ること、小説を書くこと」 『ファミリー・ライフ』(新潮社)刊行記念

【ジュンク堂 池袋本店】
開催日時:2018年03月13日(火)19:00開場 19:30開演

伝的小説『ファミリー・ライフ』で、2015年に第2回フォリオ賞を受賞したアキール・シャルマ氏が初来日されます。インドのデリーで生まれ、8歳のときにアメリカに移住、プリンストン大学でポール・オースターなどに師事して、2000年にデビューしたシャルマ氏は、少年期に兄が悲劇的な事故に遭い、家族とともに長期間の介護を続けました。本書はじつに劇的な出会いを経て、同じく脳腫瘍で兄を亡くした体験を持つ芥川賞作家の小野正嗣さんの知るところとなり、「どうしても、僕自身が翻訳したいと思った」という小野さんの熱意もあって、このたび新潮クレストブックから刊行されることとなりました。

主人公アジェの一家は1979年にインドからアメリカに移住。物質的な豊かさに驚き、文化の違いに戸惑いながらも、兄ビルジュが超難関高校に合格したことで一家には輝かしい未来が待っているかに思われました。しかし入学前の夏休みにプール事故で脳を損傷、自慢の秀才の兄は、発語も思考すらもできない、重度の要介護状態となってしまいます。

快復は困難。アジェ少年は祈ることぐらいしかできません。するとある日クラーク・ケント似の神様が現れて、君は将来有名になると予言します。自分で創り出した神様との対話に励まされながら、少年は重苦しい日々をやり過ごしますが、父はアルコールに溺れ、父母の諍いは絶えず、家族は崩壊の危機を彷徨います。物語の終盤、少年は意外な能力を発揮してプリンストン大学に合格。卒業後は投資銀行の高給取りとなります。
ところがそれでハッピー・エンドとならないのが、この小説の凄みです。著者自身の実体験に沿って書かれたこの作品は、「介護する家族の本当の苦しみとは何か」を、ラストの一行で鮮やかに訴えかけてきます。

小説の中で、大変印象的なシーンがあります。八方ふさがりの生活の中で、アジェ少年はヘミングウェイを読み、メモを取り、論文を読み、そして日々起きていることを「ヘミングウェイのように書いてみる」行為を始めます。それがやがて、少年の人生を良い方向へと変えていきます。

書くことがすなわち祈ることとなり、アジェ少年はそれに救われ、シャルマ氏もまた、13年近くという長い年月を悩み抜きながら、この作品を書き上げて高い評価を得ました。その言葉ひとつひとつを美しく翻訳して下さった小野正嗣さんをゲストにお招きして、「祈ること」そして「小説を書くこと」について、お二人の体験をふまえてぞんぶんに語っていただきます。

【講師紹介】
アキール・シャルマ(Akhil Sharma)
1971年、インド・デリー生まれ。8歳で家族とともにニューヨークに移住、ニュージャージーで育つ。プリンストン大学でトニ・モリスン、ポール・オースター、ジョイス・キャロル・オーツらのもと創作を学ぶ。2000年発表のデビュー長篇An Obedient FatherでPEN/ヘミングウェイ賞受賞後、ハーヴァード大学ロースクールで学び、投資銀行に数年間勤務。その後創作活動に専念し、第二長編である本作でフォリオ賞(2015)および国際IMPACダブリン文学賞(2016)を受賞。ニューヨーク在住、ラトガーズ大学で教鞭を取る。

小野正嗣(Ono Masatsugu)
1970年、大分県生まれ。小説家、仏語文学研究者。「水に埋もれる墓」で朝日新人文学賞、『にぎやかな湾に背負われた船』で三島由紀夫賞、『九年前の祈り』で芥川龍之介賞受賞。
訳書にV・S・ナイポール『ミゲル・ストリート』(小沢自然との共訳)、ポール・ニザン「アデン、アラビア」ほか。

★入場料はドリンク付きで1000円です。当日、会場の4F喫茶受付でお支払いくださいませ。
※事前のご予約が必要です。1階サービスコーナーもしくはお電話にてご予約承ります。
※トークは特には整理券、ご予約のお控え等をお渡ししておりません。
※ご予約をキャンセルされる場合、ご連絡をお願い致します。(電話:03-5956-6111)

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ジュンク堂書店池袋本店
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