2015年3月8日(日)

森達也さん『すべての戦争は自衛意識から始まる』伊勢崎賢治さん『本当の戦争の話をしよう』トークイベント

個の視点で、「加害の論理」を見つめつづけてきた映画監督・作家の森達也さん。世界の紛争地域で活動し、シエラレオネ、アフガニスタンで武装解除を指揮してきた伊勢崎賢治さん。
森さんは、すべての戦争は自衛意識から始まると言い、伊勢崎さんは「大切なものを守りたい」という個人の感情と戦争が起きる構造を「セキュリタイゼーション」という枠組みで説明します。戦争の現場では何が起きているのか。「テロリスト」と対峙するってどういうことか。そもそも、「テロリスト」とは何か?
加害の側の想像力を持つこと。地に足をつけて相対化すること。これからの世界を生き延びるための実践的方法を語ります。

 

戦争とは戦争を憎むことだけでは回避できない。〔略〕歴史上ほとんどの戦争は自衛への熱狂から始まっており、平和を願う心が戦争を誘引する。〔略〕
僕は後で悔やみたくない。自分たちは騙されたとか無理矢理に背中を押されたなどと言いわけしたくない。結局は加担した一人になりたくない。時代の変化を後押しした多くの国民になりたくない。

粛々と集団は動く。一方向に。同じ速度で。少数派を排除しながら。正義を掲げながら。敵を探しながら。強いリーダーを求めながら。

森達也著『すべての戦争は自衛意識から始まる』本文より

 

アルカイダもたじろぐ「イスラム国」の出現は、ビン・ラディン殺害の当然の帰結か。そして、これは、これからも繰り返される。
異文化共存というような生易しい掛け声ではない。我々自身が生き延びるために、異質なものと、融合しなくてもいいから、身近にいても、なんとかやってゆく。こういう胆力を、集団としての我々がもつ以外にないのだろう。
我々が排他する側の視点を、理解しなくてもいいから知る。その必要性を、生存のための条件として認識するしかない。

伊勢崎賢治著『本当の戦争の話をしよう』「あとがき」より

 

森 達也

森 達也

(もり・たつや)

1956年、広島県呉市生まれ。映画監督、作家。明治大学情報コミュニケーション学部特任教授。テレビ・ドキュメンタリー作品を多く制作。98年、オウム真理教の現役信者を被写体とした自主制作ドキュメンタリー映画「A」を公開。ベルリン映画祭に正式招待され、海外でも高い評価を受ける。2001年、映画「A2」を公開し、山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞する。11年、『A3』(集英社インターナショナル)で講談社ノンフィクション賞を受賞。現在は映像・活字双方から独自の世界を構築している。著書に『オカルト』(角川書店)、『死刑』(朝日出版社/角川文庫)、『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい』(ダイヤモンド社)、『たったひとつの「真実」なんてない』(ちくまプリマー新書)など多数。

伊勢崎賢治

伊勢崎賢治

(いせざき・けんじ)

東京外国語大学大学院総合国際学研究科教授。 1957年東京都生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。 インド留学中、スラム住民の居住権獲得運動を組織。その後、国際NGOに在籍し、アフリカで開発援助に携わる。国連PKO幹部として東ティモール暫定政府の知事、シエラレオネで武装解除、アフガニスタンでは日本政府特別代表として同じく武装解除を指揮する。 著書に『インド・スラム・レポート』(明石書店)、『東チモール県知事日記』(藤原書店)、『武装解除』(講談社現代新書)、『アフガン戦争を憲法9条と非武装自衛隊で終わらせる』(かもがわ出版)、『国際貢献のウソ』(ちくまプリマー新書)、『紛争屋の外交論』(NHK出版新書)、『日本人は人を殺しに行くのか』(朝日新書)などがある。 アフガニスタンでトランペットを始め、定期的にジャズライブを開催している。

書籍情報

『すべての戦争は自衛意識から始まる 「自分の国は血を流してでも守れ」と叫ぶ人に訊きたい』書影

『すべての戦争は自衛意識から始まる 「自分の国は血を流してでも守れ」と叫ぶ人に訊きたい』

著:森達也
発売日:2015年1月発売
四六判/288ページ
定価:本体1,600円(税別)

『本当の戦争の話をしよう: 世界の「対立」を仕切る』書影

『本当の戦争の話をしよう: 世界の「対立」を仕切る』

著:伊勢崎賢治
発売日:2015年1月発売
四六判/424ページ
定価:本体1,700円(税別)

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