2015年11月16日(月)~2015年11月18日(水)

【好きなら好きって】みはるの古筆部屋

天狼院書店(池袋)
イベント期間: 2015年11月16日(月)~2015年11月18日(水)

目覚めが悪いのはこれで何日目だろう。
何か怖い夢を見たとか、前日なかなか眠れなかったとかではないのだが。

朝起きて、夕方まで大学、そこから夜までバイト、明日までの課題をこなし、眠い目をこすりながらまた朝起きる。

もう、こんなサイクルを何週間続けているかさえもわからなくなってきた。

そして今日も私の目はすっきり開かないのだ。

何の変哲もない大学への道を、
普通に歩いて、
特に何も起きない一日を過ごす

と思っていたのに私は彼に出会ってしまった。
“出会う”という行為をしただけなのに、こんなにも

「好き。」

そんな感情を抱いたことはなかったように思う。

彼の名前は前から知っていた。というか私の周りではそれなりの有名人。

話しかけるきっかけはいくらでもあった。
その日は雨だったのだから、
「雨って嫌ですよね。」でも何でもよかったのだ。話しかけることさえできれば。

でも、「好き」と気づいてしまったのなら、簡単に話しかけることなんてできない。

だって、

気持ちを知られて彼に嫌われたらどうしよう。
周りから釣り合わないと思われたらどうしよう。
みはるには無理だと笑われたらどうしよう。

こんなことを考えてしまうから。

目の前に彼がいることを知りながら私は見て見ぬフリをして通り過ぎた。

やはり次の日も私の目覚めは最悪だったのだが、例によってはいつも通り大学に向かった。

そして、また彼に出会った。今日は私の友人が彼の隣にいる。

友人に話しかければ、どうにかして彼との繋がりを持てるかもしれない。そんな卑怯なことを考えて私は彼ではなく友人に

「おはよう。」

と言った。

私の気持ちを知るよしもない友人は、ただ

「みはる、おはよう。」

と返した。

私は何を友人に期待したのだろう。
彼に自分を紹介してもらえるとでも思ったのか、図々しいにもほどがある。

今日もまた彼に話しかけることはできなかった。

彼に出会ってから3日目の朝。目覚めが悪い私はまた大学に向かうために歩いている。
そして、彼もまた同じように大学に向かっていた。

ただ唯一違うことは、
彼が女の人と手をつなぎながら楽しそうにしていることだった。

ただそれだけなのに、すごく辛い。
ただそれだけなのに、目から水が溢れ出しそう。

私に悲しむ資格なんてないのだ。
だって、私は彼に対して何ひとつがんばっていないのだから。

話しかけるタイミングはいくらでもあったのに、
話しかけなくていいや、
ああ、今日も無理だったと自分からチャンスを逃していたではないか。

きっと、今彼の隣で笑っている彼女はがんばったのだ。

彼に話しかけることを、
自分の気持ちに気づかれることを恐れて何もしなかった私とは違う。

彼女は伝えたのだろう。

「好き」を。

好きなら好きって言えばよかった。

私はいつだって自分の好きなことを好きと言うことが怖いのだ。

それを言った相手に軽蔑されたらどうしよう。
そんなことが好きなの、意外と笑われたらどうしよう。
みはるにできるわけないじゃんと言われたらどうしよう。

そんな文字が頭の中に浮かぶ。

初めて天狼院を訪れたときも、不安に思いながら話していたことをよく覚えている。

「私は、、、えーっと。本を読むことが好きです。」

はセーフだろう。むしろ知的なイメージがついていいかもしれない。

「文章を書くことが好きです。」

これは、聞き手がレポート等の話だと勝手に勘違いしてくれれば問題ない。

次は完全にアウト。

「小説を書くことが好きです。」

小説家でもないのに?
小説読むことが好きなのは理解できるけど、書くってみはるらしくない。
そもそも、みはるに小説書けるの?

きっとこんな言葉が返ってくる。

と思っていたのに天狼院店主三浦さんは

「いいじゃん!みはる文藝部やりなよ!」
の一言。

ああ、私は何を勝手に怖がっていたのだろうか、
好きなら好きって言えばいいじゃないか。
自分が好きなことを好きと言えない環境はここにはない。

私は小説を書くことが好きです。

私は天狼院文藝部に出会ったのだ。

大学への道は変哲のないものではなくて、小説の舞台へ。
こんなことが起こったら面白いと想像を膨らませながら歩く。
そして、一日中私の物語を書く。

朝起きて、夕方まで大学、そこから夜までバイト、明日までの課題をこなし、眠い目をこすりながらまた朝起きる。
こんなのは、もうおしまいだ。

彼には言えなかった「好き」だからこそ、
天狼院のスタッフ、お客様にはちゃんと 自分の好きを伝えよう。

彼のときはチャンスを逃したからこそ、
ここにしかないチャンスを掴もう。

彼に対してはがんばれなかったからこそ、
がむしゃらにがんばってみよう。

好きなことを好きと私がやっと言えたとき、目覚めはきっと最高なのだ。

新人天狼院立教女子が文藝部で奮闘します。
16日から3日間行われる天狼院の大文化祭では、17日に文藝部の発表がありますのでぜひお来しください!

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