こんにちは、東京天狼院スタッフの野呂です。
小説を読んでいると、自分とは全く関係ない人物たちの、フィクションの物語にも関わらず、「あ、この二人の関係性、私とあの人に似ている……」そんなお話に出会うことってありませんか?
私にとって、『一瞬の風になれ』の著者・佐藤多佳子さんのデビュー作、『サマータイム』(新潮文庫)がそうでした。
『サマータイム』は初め、年後の姉を持つ青年・伊山進の、小5の回想シーンから始まります。その日は台風の接近する、ある夏の暑い日でした。
「あんた、山で大きな木の下じきになって死ぬのと、海でおぼれて死ぬのとどっちがいい?」
この本の最初の会話は、彼の気の強い姉・伊山佳奈のこの言葉から始まります。
両方やだよ、という弟に、
「だめよ。あんた、早死にするの」「伊山進は溺れて死ぬのよ。あと二年くらい生きられるかも」「今日が運命の日かもよ。あんた、天国と地獄のどっちへ行くの?」
と立て続けに浴びせる姉。
新しく友だちになった、広一くんという大人びた少年と進との会話。
「佳奈がすごいゼリーを作ったんだ。うまくすると、食えるかも」
「なんで姉さんなのに呼び捨てなの?」
「そう呼べって言うんだもん。外国みたいでかっこいいんだってさ」
「君の姉さんっていいね」
「今日、ヒステリーだよ」
その後、佳奈の視点から、佳奈が小1、進が幼稚園年長のときの話も語られます。
「私はピアノは欲しくなかった。進は一番欲しがっていた自転車を買ってもらった。これはサベツだ。私は、ずっとずっと小さい時から、弟が自分よりいい思いをしないように、気をつけて見はっていたのだ」
この進と佳奈の関係性が、自分の弟との関係性とまさにそっくりなのです!
私にとって弟とは、
第一に「敵」であり、第二に「おもちゃ」であり、
第三に「話のネタ」、第四に「絶対的に下の存在」、そして第五に「告発者」です。
(【年の近い弟・姉を持つ人必読 姉にとっての「弟」という存在について】この春、やっと大学生になれる弟へ ≪のろチャンネル≫ )
だから幼女佳奈の「弟ってちっとも可愛くない!」という気持ちがすごくよく分かるし、
弟の視点から見た「わがままで気取り屋」の佳奈の描写がすごく面白い(し恥ずかしくもある)。
弟に限らず、ないですか?
この二人、私とあの人にそっくり!
この関係性、めっちゃ共感できる!
というお話。
「あ、ある!」という方、3月31日(木)に、
池袋・福岡の天狼院書店という小さな書店で同時開催される「夜ファナティック読書会」で、紹介してみませんか?
……おっと、これでは「え、夜ファナティックって何よ?」って方もいらっしゃいますよね(笑)
天狼院書店では、毎週日曜日の朝、「ファナティック(熱狂的な)読書会」という読書会を開催しております。
会の進行役(マスター)が、毎週異なるテーマを設定し、そのテーマに添ったおすすめ本をお客様に紹介していただいております。(お手元に現物がなくても大丈夫です。)
過去のテーマですと、主人公・ストーリーが「狂」っている本、2/22にちなんで「猫」、「もし世界一周の旅に出るなら、どの本を持って行くか?」、一度は諦めかけたけど……それも読みたい「挫折本」、自分の萌ポイントをディープに語れる「フェティシズム」といったテーマでいろいろな本をご紹介いただきました。
お客様のテーマ解釈のひねりも個人的には毎回ツボで、先日の「猫」ファナの際、「パンダ」の本を紹介された方もいました。(パンダは大猫熊と書くそうです)
一つのテーマで、多種多様な本が一堂に会するので、普段一人で書店をふらついているのでは出会わないような素敵な本にたくさん出会えます。
そして、この読書会のすごいところは、ただ紹介する会というだけでなく、なんと紹介いただいた本をその場で発注しちゃうんです!
そして、出版社に在庫のある場合(稀にない場合もあるのでその時はご了承ください)、ご紹介いただいた本は一時的に店頭の「ファナティック棚」に並びます。
つまり、自分の選書した本が、他のお客様に買われるかもしれない! ということです。
実際、天狼院に来たお客様で、この常に移り変わっていくファナティック棚を見て、「運命を感じた」と言って本を買っていかれる方もたくさんいます。素敵でしょ?
そんな素敵な「ファナティック読書会」ですが、なかには、「日曜の朝では予定がつかない」「どうしても起きられない(それは私か)」という方もいらっしゃるようで、興味はあるけど参加できないという声がちらほら上がっておりました。
そこで去年の10月から不定期開催で行われているのが「夜ファナティック」です。平日の夜に、この素敵な読書会が行われるようになりました。
「夜ファナティック」、基本的なルールは通常ファナティックと同じなのですが、日曜朝のすがすがしいファナティックとは違い、お酒を飲みながら、ほろ酔い気分でよりファナティック(熱狂的)に、時にはディープに本を語ることができると、大変ご好評いただいております。
今回は「弟――その他、関係性に共感できる本」がテーマです。
もちろん、ストレートに兄弟でもいいですし、親子、友人、恋人、幼馴染、先生と生徒、私とペット、なんでもOKです。
そして今回のテーマは、特に≪ファナティック初心者≫の方にとても参加しやすいテーマだと思っています。
本の紹介って……どんな風にすればいいの?
どこが好きなのかって言われても……なんとなく好き! じゃ伝わらないしな……。
今まで聞き専で、自分も紹介してみたい気もするけど、みんなうまくて……。
そんな方でも、今回は、普段友達に話すような自分の身近な人についてのエピソードに、「この本のこの二人はそんな感じです!」と付け加えれば、立派な本の紹介になっちゃいます(笑)
実は私自身、先日のファナティック(テーマ:狂)が、初マスターであるだけでなく、本を紹介するのも初でした。
もともと人前で話すのが得意でないのもあって、なかなかうまく話せなくて、
会自体は笑いが絶えず、とても楽しかったのですが、そこが少し引っかかっていました。
そんな私でも、楽しく紹介できるテーマはないか……と考えて、
弟をバカにする話ならいつもやっているからできるかも! と(笑)
興味があっても紹介するのをためらって参加しないのはもったいない!
という思いから、紹介のハードルが低くなるようなテーマにしました。
人前で話すのが苦手でも、普段本をたくさん読まなくても、
何か一つでも「好きな本」「共感できる本」があれば、
少しでも「本が好き」な気持ちがあれば、ファナティック読書会は楽しめます。
もちろんファナティック上級者のみなさんも、素敵な本を紹介しに来てくださいね!
3月31日(木)、あなたも「ファナ友」になりませんか?
夜ファナティック読書会「弟―その他関係性に共感できる本」ご参加お待ちしております。
【概要】
日時:3月31日(木)
19:30~21:30 (19:15受付開始)
定員:何人でも受け入れます!
参加費:1000円+1オーダー(ドリンクでもフードでも可。)
※プラチナクラスにご加盟の方は半額でご参加いただけます。
場所:東京天狼院
【ファナティック読書会3.0について】ファナティック読書会とは、大好きな本を「ファナティック(熱狂的)」に紹介していただく、天狼院書店オリジナルの読書会です。思う存分、お好きな本をご紹介ください。それについて、語ってください。ジャンルは問いません。
また、ご紹介いただいた書籍をその場で発注し、店頭に並べるというしくみをとっている、書店だからこそできる読書会となっています。
【注意事項】
・参加者への他のイベント、セミナー、グループ、店、企業、その他への勧誘は固く禁じます。また、勧誘を見かけた場合はスタッフまでご一報ください。