脳性麻痺の人々の生活と思想をカメラに収めたデビュー作『さようならCP』(1972年)や、天皇の戦争責任に迫る過激なアナーキスト・奥崎謙三を追った『ゆきゆきて、神軍』(1987年)など知られるドキュメンタリー映画の鬼才・原一男。彼が独立型映画人を育成するために1995年に開塾した「CINEMA塾」から、深作欣二、今村昌平、大島渚、新藤兼人をゲストに迎えた講義の対話をまとめた『ドキュメンタリーは格闘技である』(筑摩書房)が先ごろ刊行されました。
本書の刊行を記念したトークイベントとして原監督が相手に選んだのは、映画監督ではなく、編集者でエッセイストの末井昭さん。ゴダールの映画から名付けたというエロとサブカル雑誌『ウィークエンドスーパー』や、80年代にアラーキー(荒木経惟)を一躍有名にした伝説の写真雑誌『写真時代』を生み出した伝説の編集者として知られる末井さんは、フリーランスとなった近年、自らの半生と自殺者への想いや死者を悼むことについて綴ったエッセイ集『自殺』を出版し、SNSなどで大きな話題となりました。
原監督は、かつて一緒に暮らし子供を連れて出ていった女性を沖縄に訪ね、2年間に渡って執拗にカメラで追い続けた『極私的エロス・恋歌1974』(1974年)を撮っています。また、ドキュメンタリー製作はお金との「格闘」でもあるはずです。一方の末井さんは、著書では自らの体験をドキュメンタリーのように赤裸々に語り、お金で四苦八苦した経験も味わっています。そんな2人がお互いの作品や体験を通して、「性とお金」について語り合います。
時 間 _ 15:00~17:00 (14:30開場)
場 所 _ 本屋B&B 世田谷区北沢2-12-4 第2マツヤビル2F
入場料 _ 1500yen + 1 drink order
原一男(はら・かずお)
映画監督。1945年山口県生まれ。1972年、小林佐智子と「疾走プロダクション」を結成し、次々に先鋭的ドキュメンタリー作品を発表。高い評価を得る。1987年『ゆきゆきて、神軍』により、ベルリン映画祭カリガリ映画賞、パリ国際ドキュメンタリー映画祭グランプリ受賞。その他の代表作に『さようならCP』『極私的エロス・恋歌1974』『全身小説家』など。1995年、次世代のドキュメンタリー作家の養成を目指し、自ら塾長となって「CINEMA塾」を開塾。現在、大阪芸術大学映像学科教授。シューレ大学アドバイザー。
末井昭(すえい・あきら)
編集者・エッセイスト。1948年岡山県生まれ。工員、キャバレーの看板描き、イラストレーターなどを経て、セルフ出版(現・白夜書房)の設立に参加。『ウイークエンドスーパー』、『写真時代』、『パチンコ必勝ガイド』などの雑誌を創刊。2012年に白夜書房を退社し、現在はフリーで編集、執筆活動を行うほか、平成歌謡バンド・ペーソスのテナー・サックスを担当。2014年『自殺』で第30回・講談社エッセイ賞を受賞。他の著書に『素敵なダイナマイトスキャンダル』(復刊ドットコム)など。