天狼院書店店主の三浦でございます。
先日、出版界のスーパーブレイン柳瀬博一さんをお迎えして「天狼院リベラルアーツ・ラボ」を初めて開催したときのことでございます。
民放の報道番組でもコメンテーターをされている、とある大御所漫画家の先生がいらしていました。
会が進む中で、その漫画家の先生が興味深いことを言ったのです。
「昔、エロ本は新しい才能の登竜門になっていた。俺もある本で小さな連載を持たせてもらっていて、それがあったから漫画家になれた。俺だけじゃなくて、多くがそうだったよ。小説家でも、カメラマンでも、そういう人多かったよ」
また、天狼院には、いわゆる「エロ本」を編集している方も仕事でいらっしゃいます。普通にパソコンを叩いているので、傍目にはそう見えないでしょうけれども。
その方が言っておりました。
「強制査察が入って、自由に作れない。本当に見せしめですよ」
また、最近のWeb記事でこんな内容のものがあったと記憶しております。
最近、テレビでヌードを見ることは皆無になった。
僕が中学生、高校生のときには、親にこっそり内緒でヌードが見られる番組が深夜に幾つか存在しました。たしかに、おもえば、最近はそれが皆無になっています。
規制、規制、規制。
もちろん、本当に必要ならば、規制は必要でしょう。
けれども、行き過ぎた規制は、大切なものを失わせる結果となるのではないでしょうか。
表現の自由という話ではなく、僕はいわゆる「エロ」を規制することによって、もっとより大きな文化の豊潤さを結果的に失っているのではないかと思うのです。
さきほどの漫画家の先生の話を聞いて、僕は危機感を覚えました。
その話が本当だったとしたら、エロはある側面で書き手を育てる余地があったわけで、文化を育成してきたことになります。
読み手として考えてみても、エロ本は、普段は小説やビジネス書、専門書を読まない人をも取り込む力を持っています。
目的がエロであっても、たまたまそこに書かれていた漫画や小説を読んで、「これは面白い」と今度は小説や漫画にはまってしまうことだってあるはずです。それで本を読むようになれば、結果的にすばらしいことだと僕は思います。
つまり、エロは文化の裾野をとてつもなく広げることになります。
それは『罪と罰』や小林秀雄の評論、『利己的な遺伝子』や『ヒッグス粒子』にはできないことです。
そう考えると、エロを健全なかたちで養うことこそが、少なくとも過剰に規制をかけないことこそが、豊かな出版文化を育てる上で、欠かせないことなのではないでしょうか。
極論かも知れませんが、ひとつの仮説として言わせてください。
出版文化がもし衰退傾向にあるとしたら、それは電子書籍のせいではなく、この業界が真剣にエロと向き合わなくなったからではないでしょうか。エロが萎縮してしまっているからではないでしょうか。
エロは広い層を取り込みます。
それは、それを買ってもらうことによって、作り手を養えるということです。
エロ文化が全盛だった70年代などは、エロがより高尚な文化を、間違いなく底支えていたのでしょう。
これを今、我々の業界は枯らそうとしているのではないでしょうか。
あるいは、規制や萎縮によって、エロを不健全なアンダーグラウンドに追いやっているのではないでしょうか。
ネットの奥深くにエロを追いやることは、逆に、エロが害になる可能性があります。
そして例によって僕は評論家ではなく、常に実践者でありたいと思っております。
この記事も、ここで終われば、単なる批判者、傍観者、卑怯者の評論家になってしまう。
それでは、健全なエロを養うためにはどうすればいいか?
僕の案はこうです。
100万部売れるエロ本を創るしかない。
もはや、それは旧来の「エロ本」というジャンルですらないかも知れません。
新しいジャンルの創造になるかと思います。
100万部売れるエロ本を創ると、いったい、どういうことになるでしょうか。
考えてみてください。つねに、様々な業界を救うのは、突出したスーパースターの出現です。
NBAではマイケル・ジョーダンが現れることによって、F1ではアイルトン・セナが、サッカー界ではマラドーナやデビッド・ベッカムが現れることによって、ジャンルの枠を打ち破って、「普遍化」が進む、つまりはそれが特に好きでもなかった人たちまで巻き込むことになる。
100万部売れるエロ本は、そういったスーパースターのようになるでしょう。
売れるということで、作り手が萎縮せずに、制作資源を投入するようになる。
そうなると、高度な競争が起きて、さらにコンテンツの質が高まっていき、更にファンの裾野を広げることになります。
健全で新しいかたちの「エロ本」が新しく創刊されるようになり、そこには70年代60年代のように、後に小説家や漫画家の大家となる若い芽も、しっかりと根づくようになります。
そうして、エロが裾野として、たとえば円錐の底面として面積を増やして行けば、文化はより高みを目指すようになります。
裾野が広い、富士山が高さを誇るように。
裾野が広いと、また体積が多くなります。
その豊潤で豊かな文化の中で、我々は今よりもはるかに高度な教養、すなわち、「リベラル・アーツ」を、当たり前のように身につけるようになるのではないでしょうか。
むしろ、「リベラル・アーツ」を身につけていない方が、恥ずかしい時代になる。
つまり、健全な「エロ」を養うことが、文化を高めることになり、「リベラル・アーツ」の水準を高めることにつながるのだろうと僕は思うのです。
そこで、まず、はじめに僕はイベントを打ちたいと思います。
9月15日(祝)、19:00より、『「エロ」こそが最強のリベラル・アーツだ〜100万部売れるエロ本を本気で創るプロジェクト〜』というタイトルで行きます。
参加される皆様からのお知恵を拝借して、本気で天狼院が100万部売れるエロ本をプロデュースしたいと思っております。
実は予告程度に先日僕個人のFacebookで、こんなイベントをやりたいので、ご協力願いますか、と投稿してみたのですが、思いがけず、大きな反応がありました。
TL(ティーンズ・ラブ)、BL(ボーイズ・ラブ)の著者や編集者の方々、そして実際にエロ本を編集している方々、インターネットで動画コンテンツを配信している大手の方々、電子書籍の業界の方々まで、広く、「協力したい!」との打診がありました。
これは、ものすごいことになりそうです。
一大ムーブメントにして、本気で100万部売れるエロ本を作り、豊かな文化のきっかけを創りたいと思っております。
お誘い合わせの上、ぜひ、堂々と参加表明してください。
大丈夫です、我々がやろうとしていることは、最強のリベラル・アーツの育成であり、文化の育成なのですから笑。
それでは、9月15日(祝)、池袋でお会いしましょう。
ここで、100万部売れるエロ本のアウトラインを皆さんと一緒に描ければと思います。
どうぞよろしくお願いします。
【概要】
日時:9月15日(祝)
開場 18:30(受付開始)
開始 19:00
終了 21:30
定員:70名様
*定員になり次第、締め切らせていただきます。
参加費:2,000円
場所:アットビジネスセンター駅前本館501号室
http://abc-kaigishitsu.com/ikebukuro/access.html
主催:天狼院書店