2016年6月25日(土)

小竹由美子 × 温又柔 「時空を超える“わたしたち”の言葉」 『屋根裏の仏さま』(新潮クレスト・ブックス)刊行記念

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時間:19:00〜21:00 (18:30受付開始)
料金:1500+500yen 1drink

世界各国の最新の文学作品を紹介する新潮社の〈新潮クレスト・ブックス〉。今年で18年目を迎える同シリーズは、カナダのアリステア・マクラウド、ウクライナのアンドレイ・クルコフといった海外の知られざる作家や、諸外国で評価の高い本邦初となる旬の作家をいち早く紹介し、これまでにベルハルト・シュリンク『朗読者』、ジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』などのベストセラーを生み出すなど、クオリティの高い上質なラインナップが海外文学ファンに幅広く支持されています。

今年3月に刊行されたジュリー・オオツカ『屋根裏の仏さま』も、そんな同シリーズの1冊。著者は戦後アメリカに移住した航空宇宙エンジニアである父と、日系二世の母とのあいだにカリフォルニア州に生まれた作家で、20世紀初頭に写真だけを頼りにアメリカに嫁いでいった「写真花嫁」の史実を元にして生み出された小説です。希望を胸に海を渡った娘たちは、厳しい労働を強いられながら、子を産み育て、ようやく平穏な暮らしを築くも、日米開戦によって町を追われ、日系人収容所へと送られていきます。「私たち」という一人称複数が積み重ねられた無数の女たちの静かなささやきは、次第に集団的記憶としての祈りのような、圧倒的な声となって立ち上がっていきます。

PEN/フォークナー賞、フランスのフェミナ賞外国小説賞ほかを受賞し、全米図書賞最終候補作にも選ばれた本書の刊行を記念して、訳者のひとりである小竹さんと、作家・温又柔さんをお迎えして、トークイベントを開催します。3歳のときに一家で日本に移住され、「台湾生まれ、日本語育ち」という環境で育った温さんの経験は、日本から海を渡った母親たちよりも早く英語を覚えてアメリカ社会に溶け込んだ百年前の子どもたちの経験と重なるものがあるかもしれません。また、本書は、〈新潮クレスト・ブックス〉でも数多くの作品を紹介し、一昨年急逝された岩本正恵さんの仕事を引き継いで小竹さんが訳されました。ダイバーシティを推進する福岡の地で、言語とアイデンティティ、翻訳、歴史と個人といったトピックを切り口に、ジェリー・オオツカの豊かな小説を読み解いていきます。

【出演者プロフィール】
小竹由美子(こたけ・ゆみこ)
翻訳家。1954年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒。訳書に、2013年にノーベル文学賞を受賞したアリス・マンローの『イラクサ』『林檎の木の下で』『小説のように』『ディア・ライフ』『善き女の愛』、ネイサン・イングランダー『アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること』(以上、新潮クレスト・ブックス)、ジョン・アーヴィング『あの川のほとりで』『ひとりの体で』(以上、新潮社)ほか多数。最新訳書アレクサンダー・マクラウド『瓦礫を運ぶ』(新潮クレスト・ブックス)が5/31に刊行予定。

温又柔(おん・ゆうじゅう)
作家。1980年、台湾・台北市生まれ。3歳の時に、家族と東京に引っ越し、台湾語混じりの中国語を話す両親のもとで育つ。2006年、法政大学大学院・国際文化専攻修士課程修了。2009年、「好去好来歌」ですばる文学賞佳作を受賞。2011年、『来福の家』(集英社)を刊行。2013年、音楽家・小島ケイタニーラブと共に朗読と演奏によるコラボレーション活動〈言葉と音の往復書簡〉を開始。同年、ドキュメンタリー映画『異境の中の故郷――リービ英雄52年ぶりの台中再訪』(大川景子監督)に出演。2015年、台湾語・中国語・日本語の三つの母語の狭間で揺れる自身のルーツを探った4年間の歩みを綴ったエッセイ集『台湾生まれ、日本語育ち』(白水社)を刊行。

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