瀬戸内海の島々を舞台にアートを展開する瀬戸内国際芸術祭。2010年から3年毎の開催で今年は第3回目となり、20を超える国と地域から約200組のアーティストが参加する今や国際的にも注目される日本を代表する芸術祭の一つです。舞台となる現地は東から西まで12の島と2つの港とこれまでにない規模となりました。この芸術祭の熱気と瀬戸内海の気分を伝える特別展示を行います。レアンドロ・エルリッヒや大岩オスカール、大巻伸嗣などの人気作家による芸術祭の作品模型やプロトタイプや、秋会期の新作に期待が寄せられるアルフレド&イザベル・アキリザンや康夏奈など。瀬戸内海の風景とともに作家たちのユニークな作品が夏の旅へと誘うことでしょう。
期間:7月6日(水)~9月11日(日)※7/27~8/1は除く
Alfredo & Isabel Aquilizanアルフレド&イザベル・アキリザン(フィリピン出身)
車の部品、更生施設のサンダル、布団など身近だが意味のある素材を集積させることでハイブリッドな現代の断層を見せるフィリピン出身のアーティスト。1999年の第3回アジア・パシフィック・トリエンナーレから、ベネチア(2003)、光州(2004)、シンガポール(2008)リバプール(2010)、シャルジャ、モスクワ(共に2013)など様々な国際展などで活躍する。日本でも福岡アジア・トリエンナーレ(1999)、越後妻有アート・トリエンナーレ(2006)、市原アート×ミックス(2014)や金沢21世紀美術館や東京都現代美術館の企画展などにも参加。自らフィリピンからオーストラリアに移住した体験と重ね合わせ、引越しにも使う段ボールを使って家や移動をテーマに作品を展開している。
Leandro Erlichレアンドロ・エルリッヒ(1973年、アルゼンチン)
人の知覚を揺るがすような作品を通してエルリッヒは、我々がどのように事象を捉え、空間と関わり、そして、現実を把握していくかについて探求している。知覚や認知といった問題を扱いながらも科学的実験の厳密さではなく、ユーモアとウィットに富んだねじれた空間、だまし絵のような手法によるエルリッヒの作品は、作品を体験する人同士の関係を解きほぐし、人々が共有できる場を生み出す。金沢21世紀美術館のプールや越後妻有里山現代美術館のトンネルなどの常設作品のほか、鏡などを利用して観る側を巻き込む作品で人気が高い。近年、日本だけでなく台湾・韓国などアジア地域での展覧会が加わってきた。
Jin Hasegawa長谷川仁(1972年、北海道)
社会学、プロダクトデザインを学んだ後アーティストとして活動を始める。社会とのつながり、自然とのつながりを皆で分かち合いたいとの想いで様々なプロジェクトを行う。
Bunpei Kado 角文平(1978年、福井)
2007年に 第10回岡本太郎現代芸術大賞展特別賞を受賞。盆栽と鉄塔、あるいは椅子と木の芽を組み合わせるなど、日常的に見慣れたものを組み合わせることで新たな意味を見る側に連想させるような彫刻で注目を集める。2013年には瀬戸内国際芸術祭に参加。瀬戸内海に浮かぶ小さな島で空き家を使ったプロジェクトを実施。それまでの自ら加工するものを作品化することから作品周辺の空間を作品の一部として取り込むようになる。
Takahito Kimura 木村崇人(1971年、愛知)
「地球と遊ぶ」をテーマに作品を展開してきた稀有な作風のアーティスト。もともと「見えないものを見せる」ことをテーマとしていたが、世界中誰もの共通言語である「地球」や「自然」の力を視覚化することで、誰もが知識として「知っている」と思っていることと実際の科学現象と認識のずれを、視覚だけではなく、実際に体で感じさせる作品を中心に展開している。
John Körmeling ジョン・クルメリング(1951年、オランダ)
アーティストであり建築家である彼は、都市計画における問題に取り組むなど公共スペースにおける視覚情報としてのアートを最大限に活かしたユニークなプロジェクトを展開している。
Kana Kou 康(吉田)夏奈(1975年、東京)
康は風景を描くのに、実際にその場所で行った身体的体験をもとに描いている。山に登ったり海に潜ったりという経験は身体に記憶として刻み込まれ、その記憶をもとに風景を操作するというプロセスを辿る。2011年のオペラシティアートギャラリー、2012年のLIXIL ギャラリーやアートフォーラムあざみ野、2013年はVOCA2013や瀬戸内国際芸術祭2013にも参加する注目のアーティストで、瀬戸内国際芸術祭2013年に発表した花寿波島の秘密という逆円錐形の作品は、この芸術祭を代表する作品として高い評価を受けた。小豆島に移り住んで現在も活動を続けるが、興味は立体やインスタレーション作品にも広がっている。最新のギャラリーでの個展では、小豆島の植物や石のドローイングをレリーフ状に仕上げ、その細かい肌合いと宇宙を重ね合わせて描いている。
Satoshi Murakami 村上慧(1988年、東京)
「2014年4月から現在まで発泡スチロールで制作した自身の家を背負って日本中を歩き、移住を繰り返しながら暮らしています。毎日たどり着いた地で他人に交渉して土地を借り、家を置いた瞬間から町中が間取りになる(自身の家は寝室に、近場の銭湯が風呂場に、公衆トイレがトイレに、そのそばの水場が洗面所に、といった具合に)その生活は、今の日本での「普通の暮らし=定住生活」を徹底的に相対化します。これは、他と関わりを持つことをテーマに制作を続けてきた作家が2011年の震災を受け浮き彫りになったこの社会の不和や違和感に正面から向き合うひとつの運動です。」作家ブログより
Shinji Ohmaki 大巻伸嗣(1971年、岐阜)*8/2以降に展示
「トーキョーワンダーウォール2000」に『Opened Eyes Closed Eyes』で入選以来、『Echoes』シリーズ(資生堂ギャラリー、水戸芸術館、熊本現代美術館、東京都現代美術館等)、『Liminal Air』(東京ワンダーサイト、ギャラリーA4、金沢21世紀美術館 、アジア・パシフィック・トリエンナーレ2009、箱根彫刻の森美術館等)、『Memorial Rebirth』(横浜トリエンナーレ 2008)など、展示空間を非日常的な世界に生まれ変わらせ、鑑賞者の身体的な感覚を呼び覚ますダイナミックなインスタレーション作品やパブリックアートを発表。またフランスのエルメス(セーヴル店)やルイ・ヴィトンのファッションショー(パリ)でのインスタレーション発表など世界から注目される。
Oscar Oiwa 大岩オスカール(1965年、ブラジル)
物語性と社会風刺に満ちた世界観を、力強くキャンバスに表現する油絵画家。独特のユーモアと想像力で、サンパウロ、東京、ニューヨークと居を移しながら制作を続けている。サンパウロに生まれ、建築学科を卒業した作家は、東京の建築事務所で働きながらアーティストとしても活動。奨学金を得てニューヨークに移り住み、現在も米国を拠点としている。大岩はよく旅をし、移動しながら複数の文化に根差した自らのアイデンティティを模索しているように思われる。緻密なタッチや鳥瞰図的な構図を使い、新聞記事やネットの中に社会問題の糸口を見出し、入念なリサーチをもとに大画面をしあげる彼の作風のファンは多く、国内外の多くの美術館で作品が収蔵されている。
Esther Stocker エステル・ストッカー(1974年、イタリア)
鑑賞者が入り込むことのできる幾何学模様で埋め尽くされた空間をつくることで知られる作家。独特のパターンで繰り広げられる小さな線や面の欠片の集積は、思いがけない視覚効果と空間に対する身体感覚がずれていくような不思議な空間を生み出している。
会期:2016年07月06日(水) – 2016年09月11日(日)
時間:朝9時~深夜2時
場所:蔦屋書店2号館 2階 Anjinフロア
主催:Anjin
共催・協力:Art Front Gallery
問い合わせ先
03-3770-1900