「双子の弱い視力で見渡せたのは、赤や黄色や緑色に彩られた畑が網の目のように広がる大地と、そこここに点在する真っ白な農家だけだった。彼らは、そうした農家で暮らし、死んでいったウェールズ人の父祖たちのことを考えながら、ケヴィンが言ったことを信じるのは――不可能でないにせよ――とても難しいと思った。世界はいつ何時大爆発で破滅しても不思議はないだなんて、と。」
20世紀の到来と同時にウェールズとイングランドの境界線上の家に生まれた双子の兄弟ルイスとベンジャミン。この村から一歩も出ないで二人は人生を送る。二つの大戦も、技術革新による生活の変化も、同じベッドに眠る二人にとって遠い世界。髪は枕カバーより真っ白になった80歳の誕生日、セスナに乗った双子は上空から自分たちの生きてきた「世界」を初めて眺める。そして……
――この夏みすず書房より刊行された、ブルース・チャトウィンの長編小説『黒ヶ丘の上で』。
これを記念し、翻訳をされたアイルランド文学者の栩木伸明さんと、お相手に、チャトウィンの文学世界に導かれて西アフリカに暮らすことになったラテンアメリカ文学者の旦敬介さんをお招きし、トークイベントを開催します。
同世代で、今年同時に読売文学賞(随筆・紀行賞)を受賞されたお二人の、もうひとつの共通点であるブルース・チャトウィン。
旅に生きたチャトウィンによる、「旅をしない人たちの物語」、『黒ヶ丘の上で』を中心に、その小説世界の深みへと、みなさまをお誘いします。
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出演 _
栩木伸明(アイルランド文学)
旦敬介(ラテンアメリカ文学)
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時間 _
19:00~21:00 (18:30開場)
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場所 _
本屋B&B
世田谷区北沢2-12-4 第2マツヤビル2F -
入場料 _
1500yen + 1 drink order