山の神さまは嫉妬深い女の神さま。 自分より醜いオコゼの顔を見ると、安心するとともに喜び、根願いを叶えてくれる。
こんな伝承に興味をもった2人の研究者がいます。
南方熊楠と柳田國男です。
ある日、柳田は、熊楠という人が自分と同じく「山神とオコゼ」に関する伝承に興味を持っていることを彼の論文を読んで知り、一通の手紙を送ります。それまで面識のなかった2人ですが、そこから縁がはじまり、以来、書簡を通じて交流、意見・情報交換をし、濃密な関係を築いてきました。2人とってそれぞれの学問や研究、とりわけ民俗学への見解を深めるために、大切な時間だったことでしょう。しかし、正面から意見をぶつけ合っていたことも相まってか、さまざまな点での意見の相違が色濃くなってゆきます。二人の通信から生まれた、日本初の民俗学研究誌『郷土研究』上でも、両者の志向性の違いは次第に鮮明になっていきました。
今回の「南方熊楠 もうすぐ生誕150年」は、奇遇な邂逅をし、興味深い変遷を辿った、柳田國男と南方熊楠の不思議な関係に迫ります。
現在、千葉の佐倉市に位置する国立歴史民俗博物館において、「柳田國男と考古学-柳田考古遺物コレクションからわかること―」が開催中です。柳田がいかに民俗学を確立してきたか、柳田の考古物収集の視点から、彼の思想の根源に迫ることができる貴重な展示です。粘菌やきのこの採集で知られる熊楠ですが、彼もまた考古物の採集・収集に関心をもっていました。このように民俗学や考古学への関心、考古物の収集という共通点、書簡のやり取りなど、柳田と熊楠を紐解くヒントはたくさんありそうですが、実は、今も尚、2人の関係は多くの謎に包まれています。
なぜ、柳田と熊楠は別の途を歩むことになってしまったか。最大の考え方の違いは何だったのでしょうか。そして、2人の出会いは、考古学そして民俗学にどのような道標となったのでしょう。もし、2人の交流が続いていたら、これらの学問はどのような道をたどっていたのでしょうか。
今回は、柳田研究者である松田睦彦さん、熊楠研究者である田村義也さんが、柳田と熊楠があつく往復書簡を交わしたように、正面から2人の関係、思想について語り合っていただきながら、2人がいかにして民俗学を作り上げてきたのかを学んでいきます。
さらに、文化や学問はいかにして生まれるのか、柳田と南方2人の邂逅と交流を通じて、その萌芽についても考えるきっかけにしたいと思います。
歴博での柳田展には南方から柳田へ宛てた手紙を浄書させた手控え「南方来書」も展示されているので、本レクチャーと合わせてお見逃しなく。
概要
日程:2016年9月24日 (土)
時間:18:00~20:00 開場17:30~
料金:2,700円(税込)
定員:45名様
会場:本店 大教室
お問合せ先
青山ブックスクール
電話:03-5485-5513
メール:culture@boc.bookoff.co.jp
営業時間:平日 10時~20時 土・日・祝休み
住所
東京都渋谷区神宮前5-53-67 コスモス青山B2F
青山ブックセンター本店内
タイムスケジュール(予定)
南方熊楠に出会うまでの柳田國男について 30分
柳田國男に出会うまでの南方熊楠について 30分
– 休憩5分 –
松田さん、田村さんの対談 40分
質疑応答 15分
松田 睦彦 まつだ・むつひこ
国立歴史民俗博物館 研究部 民俗研究系
准教授
専門分野:生業および生業にともなう信仰・儀礼・人の移動に関する研究
国立歴史民俗博物館公式webサイト
田村 義也 たむら・よしや
1966年生まれ。比較文学比較文化専攻。
平成6年頃より、和歌山県田辺市の南方熊楠邸蔵書・資料調査に参加、『南方熊楠邸蔵書目録』『同 資料目録』を編纂。現在、南方熊楠顕彰会学術部長として同館所蔵資料の調査および翻刻事業に協力。成城大学非常勤講師。 編訳著書に全訳『南方熊楠英文論考([ネイチャー]誌篇・[ノーツ・アンド・クエリーズ]誌編)』『南方熊楠とアジア』『南方熊楠大事典』等。
南方熊楠顕彰館公式WEBサイト
展覧会情報
柳田國男と考古学-柳田考古遺物コレクションからわかること―
2016年4月12日(火)~2016年10月10日(月祝)
国立歴史民俗博物館 総合展示 第4展示室副室にて
公式webサイト
左:南方熊楠(明治19年、渡米前の記念肖像)南方熊楠顕彰館蔵
右:柳田国男(明治41年頃)成城大学民俗学研究所蔵