―《本のタイトル・帯・紹介文》から迫る熊楠の「枕詞」と時代が求めた熊楠像―
てんぎゃん(天狗さん)、 博覧強記、超人、超脳力者、奇想天外な巨人、在野の学者、博物学者、先駆的エコロジスト、自由人、世界に認められた在野の学者、学際的博覧強記を誇る天才、時代の枠を越えた巨人、大怪人、不思議探究家、自由のたびびと、こどもの心をもちつづけた学問の巨人、世界に通じた偉大な学者、謎の天才学者、自然保護運動の先駆者、奇人、人間博物館・・・
これらは南方熊楠につけられた、あだ名や枕詞、キャッチコピーです。
実にさまざまな言葉で語られてきたことが分かります。
それもそのはず、粘菌、きのこ、密教、妖怪、民俗学、エコロジー、セクソロジー・・・など、とどまるところを知らない好奇心と、多岐にわたる研究活動、そしてたくさんの功績を遺した熊楠を一言でこんな人だったと言い表すのは難しいかもしれません。さらに、南方熊楠を語る言葉や視点、研究の切口は各時代の流行や状況と密接に関係し、その時代が求めた熊楠像がさまざまな形で語られてきたようです。
では、南方熊楠は時代によって、どのように語られてきたのでしょうか。
時代は、熊楠に何を求め、何を見出そうとしていたのでしょうか。
そして、南方熊楠の枕詞から日本のどのような歴史や心理が見えてくるのでしょうか。
第7回目を迎える、今回の「南方熊楠 もうすぐ生誕150年」では、熊楠の死後から現在にいたるまでに刊行された熊楠に関する「本」のタイトルや帯文、紹介文を中心に、熊楠がどの時代にどのような言葉で語られ、どのような視線を向けられてきたのかを整理し、熊楠と時代の関係を通史でたどりながら、南方熊楠の虚像、理想像、実像を学びます。
講師は、『南方熊楠-日本人の可能性の極限』(中公新書)の著者で、龍谷大学世界仏教文化研究センター博士研究員の唐澤太輔さん、そして南方熊楠顕彰会理事の田村義也さんです。南方熊楠研究の最前線に立たれているお2人から、今後の熊楠研究について、さらに熊楠論の新しい展開として、アートとのつながりについてもお話いただきます(アートホステルkumagusuku等)。
みなさんにとっての、南方熊楠はどんな人物でしょうか?
ぜひ、本レクチャーを通じて、自分にとっての南方熊楠を探してみてください。
唐澤太輔さんからメッセージ
熊楠の「枕詞」からは、彼がいかに多才な人物だったかを垣間見ることができます。しかし、そのことは、それだけ南方熊楠という人物が、曖昧で漠然とした人物であるということでもあります。私たちは、南方熊楠という人物に、何かとても「大きなもの」を背負わせようとしてきたのかもしれません。例えば、世界へ向けた日本人の底力であったり、西欧の知と対決できる日本人像であったり……。つまり、私たちは彼にさまざまな理想を投影してきたのではないかと思うのです。 私たちは、熊楠に、その時代その時代の理想としての日本人像(日本人としての在り方)、さらに言うのであれば「ヒーロー像」を投影していたのではないでしょうか。私は、熊楠の「枕詞」と当時の社会情勢そして「人々の願い」は密接に関係していると考えます。今後、私たちは熊楠に何を託すのでしょうか。熊楠に理想を見る、つまり熊楠に何か特定のイメージを付与することは、熊楠の「神話化」であり、やめたほうがよい事柄なのでしょうか。では、逆に彼を「丸裸」にすることだけに終始した先に見えてくる事柄とは何でしょうか。本レクチャーでは、これらを問うてみたいと思います。
レクチャーの流れ
1)熊楠の死後現在まで時代をいくつかに区切り、その年代の特徴を見ます。
2)その年代における熊楠に対する研究の切り口はどのようなものだったかを概観します。
3)その年代に刊行された、特徴的な熊楠に関する書籍の題名・帯文などを見ます。
4)各年代において、私が個人的に画期的だと思った著作については、その内容を簡単に紹介します。
5)私の考える、その年代に特徴的な熊楠の「枕詞」および熊楠像を提示します。
6)熊楠がどのように語られ、私たちが熊楠に何を見ようとしていたのかを端的に示します。
概要
日程:2016年10月29日 (土)
時間:18:00~20:00 開場17:30
料金:2,700円(税込)
定員:45名様
会場:本店内 小教室
お問合せ先
青山ブックスクール
電話 03-5485-5513
メール culture@boc.bookoff.co.jp
営業時間
平日 10時~20時 土・日・祝休み
住所
東京都渋谷区神宮前5-53-67
コスモス青山B2F
青山ブックセンター本店内
唐澤太輔 からさわ・たいすけ
1978年、兵庫県神戸市生まれ。2002年、慶應義塾大学文学部卒業。2012年、早稲田大学大学院社会科学研究科博士後期課程修了(博士〔学術〕)。日本学術振興会特別研究員、早稲田大学社会科学総合学術院助手、助教を経て、現在、龍谷大学世界仏教文化研究センター博士研究員。専門は、哲学・倫理学、南方熊楠研究。2009年、論文「ひらめきと創造的活動のプロセス―南方熊楠の「やりあて」に関する考察を中心に―」で第5回涙骨賞(最優秀賞)、早稲田大学小野梓記念学術賞受賞。著書に『南方熊楠の見た夢―パサージュに立つ者―』(勉誠出版2014年)、『南方熊楠―日本人の可能性の極限―』(中公新書2015年)などがある。
龍谷大学世界仏教文化研究センターwebサイト
田村義也 たむら・よしや
1966年生まれ。比較文学比較文化専攻。
平成6年頃より、和歌山県田辺市の南方熊楠邸蔵書・資料調査に参加、『南方熊楠邸蔵書目録』『同 資料目録』を編纂。現在、南方熊楠顕彰会学術部長として同館所蔵資料の調査および翻刻事業に協力。成城大学非常勤講師。 編訳著書に全訳『南方熊楠英文論考([ネイチャー]誌篇・[ノーツ・アンド・クエリーズ]誌編)』『南方熊楠とアジア』『南方熊楠大事典』等。
南方熊楠顕彰館公式サイト
書籍情報
『南方熊楠―日本人の可能性の極限』
著:唐澤太輔
価格:880円+税
中公新書
『南方熊楠の見た夢』
著:唐澤太輔
価格:4,200円+税
勉誠出版