琥珀、葉、種子、洞窟、そして文字の記された書籍まで。〈書物〉とは地質学的時間と歴史的時間を結んで生じた、大いなる変身の産物だった。この持続的で多様な変身物語のなかで、書き手の存在はたえずゆらいだ。人間が書いた歴史の編み目も穴だらけだった。樹脂や果実のことばを写しつづけるソローやレヴィ=ストロース。時間のほころびから洩れる声を聴きとるカフカやケージ。強迫的な抑圧から、意図のない抑制へ。ひかえめに引用し、朗読し、写しとり、素描する。そのようにして、ことばを、声を、あなたに手渡すことができるだろうか。
――今福龍太『書物変身譚』の刊行を記念し、著者の今福さんと、ピアニスト/作曲家の高橋悠治さんをお招きしトークイベントを開催いたします。
お二人のテクストの断片や、レコードやCDの音を対話の句読点のようにはさみながらの、文学や音楽や声や身体をめぐる即興的な対話。
特別な2時間となるはずです。ぜひお立ち会いください。