「現代建築における技術論は、実に多様化しているが、その最大の論点は、戦後建設され、ほとんど都市部を覆い尽くしているかにも見える現代建築の「営繕」にある」
戦後の建築の近代化、すなわち建築の工業化は、建築の民主化を促した一方、設備の重装化によって修繕することに地獄のような技術的困難を持ちこみ、<私たち>の建築をスクラップビルドするように促している。
しかし、経済の成長がスローダウンし、人口減少が進み、住宅もオフィスも過剰供給に陥っている現在、「建てることに」に希望を託すことはもはや限界にきている。私たちに突きつけられているのは、今ある建築資産を修繕してストックとして保つという地獄のような茨の道であるが、それは同時に微かな光が差し込む‘希望’の道でもある。
ゲストには、歴史工学を提唱し建築史に新たな道を切り開いている、中谷礼仁さんをお呼びして、書籍では展開できなかった具体的な建物の修繕の事例も含めながら、アクチュアルな議論を重ねる。
・「建築・都市レビュー叢書」(NTT出版)
21世紀の建築・都市についての議論を活発化させ、新たなパラダイムに応答する、世代・分野を超えた新しい知の「プラットフォーム」を生み出すことを目指す。通称R本。
【プロフィール】
内田祥士(うちだ・よしお)
建築家、東洋大学ライフデザイン学部教授、博士(工学)。
1955年東京生まれ。1978年早稲田大学理工学部建築学科卒業。1983年増沢建築設計事務所退所。1989年東京大学大学院博士課程退学、習作舎設立。主な作品に《妙寿寺庫裏》(習作舎)、《秋野不矩美術館》(藤森照信との共同設計)、《東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科実験工房棟(改修)》(久米設計との共同設計)など。主な著書 『東照宮の近代』(ペリカン社、2009年)など。
中谷礼仁(なかたに・のりひと)
建築史・歴史工学(アーキオロジー)、早稲田大学教授。
近世大工書研究、数寄屋・茶室研究の後に、視野を拡大し都市の先行形態の研究、今和次郎が訪れた民家を再訪しその変容を記録する活動の主宰を経て、千年続いた村研究−千年村プロジェクトを行う。2013年ユーラシアプレートの境界上の居住文明調査でアジア、地中海、アフリカ各地を巡歴。2010-2011年日本建築学会発行『建築雑誌』編集長。著書に『動く大地、住まいのかたち プレート境界を旅する』(岩波書店2017)、『実況 近代建築史講義』(LIXIL出版2017)、『今和次郎「日本の民家」再訪』瀝青会名義(平凡社2012)、『セヴェラルネス+』(鹿島出版会2011)、『近世建築論集』(アセテート2004)『国学・明治・建築家』(蘭亭社1993)。受賞:日本生活学会今和次郎賞(瀝青会名義2013)、日本建築学会第一回著作賞(同上2013)
真壁智治(まかべ・ともはる)
1943年生まれ。プロジェクトプランナー、「建築・都市レビュー叢書」キュレーター。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、東京拳術大学大学院美術研究科建築専攻修了。同大学助手を経てプロジェクトプランニングオフィス「M・T・VISIONS」主宰。「建てない建築家」を標榜し、広汎な知己力と旺盛な創像力を駆使して、戦略的視点に立つ都市、建築、住宅分野のプロジェクトプランニングに取り組む。2006年、建築家と取り組む「くうねるところにすむところ」シリーズで第2回武蔵野美術大学芦原義信賞を受賞。著書に、『アーバン・フロッタージユ』(住まいの図書館出版局)、『感応』(用美社)、『カワイイパラダイムデザイン研究』(平凡社)、『ザ・カワイイヴィジョンa』、『ザ・カワイイヴィジョンb』(ともに鹿島出版会)、『応答 漂うモダニズム』(編著、左右社)などがある。
日程 / 2018年2月2日 (金)
時間 / 19:00~20:30 開場 18:30~
料金 / 1,350円(税込)
定員 / 50名様
会場 / 本店内 小教室
お問合せ先 / 青山ブックセンター 本店
電話 / 03-5485-5511
受付時間 / 10:00~22:00