日本の写真界の第一人者、上田義彦の新作写真集『68TH STREET』(ユナイテッドヴァガボンズ)を巡る、若手世代を代表する奥山由之との貴重な対談セッション。NYの68丁目の部屋で3週間に渡って撮影された、光と影のドラマをモノクロで捉えた新作写真集は、NYのデザイン界の巨匠ファビアン・バロンによる工芸品的デザイン&造本で限定千部、定価1万円という特別な体裁で5月頭に発売となります。その上田氏と、上田氏の主宰するGallery916で昨年、写真展も開催した奥山氏が、写真の根源に迫るようなこの上田氏の新作を題材に「写真とは何か?」を巡るダイアローグを行います。この日本で最も注目すべき写真家二人の世代を超えた対談は、観客の写真観を広げる体験になるでしょう。
※トーク終了後、サイン会も開催いたします。
上田義彦 うえだ よしひこ
写真家/多摩美術大学グラフィックデザイン学科教授
1957年兵庫県生まれ。24歳の時プロフェッショナルとして写真家の道に入る。以来、透徹した自身の美学のもと、さまざまな被写体に向き合うことになる。ポートレート、静物、風景、建築、パフォーマンス等、カテゴリーを超越した作品は国内外で高い評価を得る。2015年には自身の30余年の活動を集大成した写真集『A Life with Camera』を出版。代表作のひとつであるアメリカンインディアンの聖なる森を捉えた『QUINAULT』(1993)は、その後も上田を森に誘い、2017年には約30年ぶりに再びQUINAULTの森、そして日本の屋久島の森、春日の森を撮影し、写真集『Forest 印象と記憶1989-2017』にまとめた。2014年、日本写真協会作家賞を受賞。同年から多摩美術大学教授として後進の育成にも力を注ぐ。
奥山由之 おくやま よしゆき
1991年東京生まれ。2011年『Girl』で第34回写真新世紀優秀賞受賞。2016年には『BACON ICE CREAM』で第47回講談社出版文化賞写真賞受賞。著作は他に『As the Call, So the Echo』『君の住む街』など多数。近年では、TVCM・MV・映画など監督業も精力的に行っている。
日程:2018年5月27日 (日)
時間:14:00~15:30 開場 13:30~
料金:1,350円(税込)
定員:110名様
会場:本店 大教室
お問合せ先
青山ブックセンター 本店
電話 03-5485-5511
受付時間 10:00~22:00
『68TH STREET』
著者:上田義彦
体裁:B4変形(天地360mm×左右254mm×厚さ23mm)/ハードカバー/クロス掛け/エンボス加工/フランス装/140ページ/4C印刷/1000dpi製版/シュリンク包装/バイリンガルテキスト
定価:10,000円+税
限定千部(国内書店販売は300部のみ)
編集・発行:ユナイテッドヴァガボンズ
#『68TH STREET』
写真家上田義彦が撮り下ろした最新写真集。
上田は一枚の紙をモチーフに、ニューヨーク68丁目の部屋に落ちてくる、移ろい、刻々とその姿を変える光を追いかけ、完璧な美しさでモノクロームの印画紙の上に、上田にとっても命題であった写真の宿命である光と、それによって生まれる影として定着させた。その深淵な「光と影」の写真群は、撮影後すぐにニューヨークで、上田が信頼する旧知のアートディレクター、ファビアン・バロンに託され、撮影された時間軸そのままに光の軌跡として写真集に刻印された。上田とファビアン・バロンは雑誌『Visionaire』以来、実に25年ぶりに共演となる。
#本のデザインは、NYのファビアン・バロン。カルバン・クライン、ディオール、ザラなどのキャンペーンを長年手がけ、雑誌『Interview』のクリエイティヴ・ディレクターも手がける世界で最も著名なアートディレクターである彼が、その完璧主義を追求して挑んだシャープながらもこだわり抜いた工芸品のようなデザインと造本。
#編集は、上田義彦の集大成的写真集「A Life with Camera」をはじめ、篠山紀信、森山大道、マーク・ボスウィック、ジェフ・バートンなどの写真集を手がけ、17年にはNYのエレナ・エムチュックの写真集「Anna」も手がけた菅付雅信(株式会社グーテンベルクオーケスオラ代表取締役)。『初めての編集』『物欲なき世界』『写真の新しい自由』『これからの教養』などの多数の著書がある。「68TH STREET」は、菅付が代表を務めるアートブック出版社ユナイテッドヴァガボンズからの出版になる。
#印刷・製本は京都のサンエムカラー。数々の写真集や美術書、カレンダーなどの美術印刷で知られるサンエムカラーならではの1000dpi(通常の印刷物の約3倍の画素密度)の高精度印刷と、B4変形、ハードカバー、クロス掛け、フランス装で140ページ(通常のページ換算だと280ページ)、UVインクとエンボス加工も施した、日本の印刷技術と造本技術の粋を極めた仕上がり。
<ファビアン・バロンによる『68TH~』へのコメント>
「上田義彦の作品は何年も前から知っていました。彼の写真ならびに同じ被写体を撮り続ける姿勢がとても好きです。この写真集は上田義彦にとって非常にパーソナルで、観る人は彼の心の奥にある考えにたどり着く親密な旅のような作品だと思います。紙の上の光だけという、イメージのシンプルさと純粋さにとても感動しました。この本をデザインするにあたり、写真をよりよく理解するため、写真のシンプルさと同じ次元の控えめな表現が必要でした。上田義彦の写真には、同じ被写体を撮り続ける強いこだわりを感じます。被写体を選ぶことは、彼の内面的な旅と言っても良いほどです。カメラの存在は彼の考えを写し出す道具にすぎません。彼の作品は、一度観たら頭から離れなくなります。その理由は、被写体は彼の人生であり、全てを理解し感じ取るものだからです。彼が持っているエネルギーは作品が完成するまで保ち続けています。ひとつの被写体の全てを感じ取るまで、彼は次に進みません。その行動は彼の作品に揺るぎない一貫性と、アーティストであるために必要な脅迫的なまでの執念を示しています。」