2015年・春、東日本大震災後はじめてとなる美術批評家・椹木野衣さんの著書、『後美術論』(美術出版社)、『アウトサイダー・アート入門』(幻冬舎)が刊行されるとともに、「グランギニョル未来」のプロジェクト第2弾が発表されます。
このたび、そんな3つの刊行と発表を記念し、椹木野衣さんのトーク&レクチャーシリーズ「震災以後の世界~ジャンルの破壊と溶解。創造の地平を目指して」を開催します。
それぞれの形態、内容、関わる人々は異なりますが、すべてにおいて「震災以後の世界」を念頭に置いたと椹木さんは言います。本トークシリーズでは、それぞれの書籍とプロジェクトを結合させることで、3つを貫く「震災以後の世界」をそれぞれの視点から掘り下げて考えていきます。
第1回目は『後美術論』(美術出版社)に沿ってお送りします。
2010年11月号より『美術手帖』にて連載中の「後美術論」の14回分が収録されている本書は、東日本大震災をまたいで書き継がれ、美術や音楽などのジャンルの壁を破壊し、新しい芸術批評を試みる挑戦的な一冊です。
ではジャンルという壁を破壊し、すべてを融解させることで見えてきたものとは何なのでしょうか。そして、「後美術」とはどのような概念なのでしょうか。
今回は、『美術手帖』編集長の岩渕貞哉さんをゲストにお迎えし、椹木さんに「後美術」についてお話いただきながら、震災以後の世界における芸術批評の役割と可能性を考えていきます。
椹木野衣さんからのメッセージ
「後美術」とは、今ある美術の危機に対応できるよう、著者の私が考え出した新しい批評的な概念です。私は、20世紀末から21世紀にかけての「美術」は、後代からは、現在私たちが考えているものとは、相当に異なるものに刷新されるはずだと考えています。『後美術論』は、この観点に立ち、近代以後のジャンルによる芸術の分断を壊して、日本語の「美術」とも欧米圏での「ART」とも異なる、遥かに広い意味での「アート」を再構築しようとする試みです。
*第2回目は『アウトサイダー・アート入門』(幻冬舎)をテーマに開催予定です。
詳細は、決定次第、青山ブックセンターWEBページにてお知らせいたします。
岩渕 貞哉
いわぶち ていや
『美術手帖』編集長
『美術手帖』編集長。1975年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。2002年から『美術手帖』編集部に在籍、2008年より現職。2015年3月に新創刊した『美術手帖 国際版』編集長も務める。
美出手帖公式WEBサイト:http://www.bijutsu.co.jp/bt/
椹木 野衣
さわらぎ のい
美術批評家。1962年生まれ。著書に『日本・現代・美術』(新潮社、1998年)、『シミュレーショニズム』(増補版・ちくま学芸文庫、2001年)、『戦争と万博』(美術出版社、2005 年)、『なんにもないところから芸術がはじまる』(新潮社、2007 年)、『新版 平坦な戦場でぼくらが生き延びること 岡崎京子論』(イースト・プレス、2012 年)など。現在、多摩美術大学教授。
『後美術論』(美術出版社)
稀代の美術批評家が、3.11をまたいで書き継いだ大著 『美術手帖』2010年11月号から連載中の、美術批評家・椹木野衣による「後美術論 第一部」から全14回を収録。 後美術(ごびじゅつ)とは: 美術や音楽といった既成のジャンルの破壊を行うことで、ジャンルが産み落とされる前の起源の混沌から、新しい芸術の批評を探り当てる試み。例えば、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの活動を同じ「後美術(アート)」と呼ぶこと。ポピュラー音楽と前衛美術の枠組みが外されて、二人のアーティストとなったジョンとヨーコによる「音楽と美術の結婚」——。このジャンルを溶解させる婚姻から授かる創造の地平が「後美術」である。
本書に登場する「後美術」家たち
オノ・ヨーコとジョン・レノン / ライバッハ、
U2 / ヘルマン・ニッチュ、
ブラック・サバス、
イギー・ポップ、
アリス・クーパー / メイプルソープとパティ・スミス、
サム・ワグスタッフ、
マドンナ / デレク・ジャーマン、
スロッビング・グリッスル、
SPK、
J・G・バラード、
エドゥアルド・パオロッツィ / ノー・ウェイブ、
セックス・ピストルズ、
マルコム・マクラーレンとヴィヴィアン・ウエストウッド / フランチェスカ・ウッドマン、
リディア・ランチ、
デイヴィッド・ヴォイナロヴィッチ / ソニック・ユース、
マイク・ケリー、
クリスチャン・マークレー / チャールズ・マンソンとファミリー、
ビートルズ、
ビーチ・ボーイズ / クリス・バーデン、
ケネス・アンガー / ティモシー・リアリー、
ロバート・ジョンソン / Perfume、
クラフトワーク、
ギルバート&ジョージ / アンディ・ウォーホルとヴァレリー・ソラナス