建物を建てるには様々な法規制をクリアしなければなりません。建築基準法や都市計画法、景観条例の他、施設の用途によっては、例えば宿泊施設なら旅館業法、保育園なら児童福祉法など、それらに付随する様々な法律の規制を考慮しなければなりません。時には「法」は自由に建築することの足枷になる場合もあります。
建築に限らず、「法」とは人々の自由を縛るためにあると考えている人は多いと思います。しかし、その一方で「法」を前向きに捉え、自分達でルールを作り、そしてそのルールを超えていこうとする動きをする方達が出てきました。
再構祭の最終審ではそのような方達の代表として、シティライツ法律事務所の水野祐さんと、再生建築研究所の神本豊秋さん、元国土交通省の佐々木晶二さんをゲストにお招きします。
近年、政府も、民泊特区や住宅ローン減税、都市再生特別措置法など、建築業界を後押ししようとする政策を数多く打ち出しています。しかし、戦後、高度経済成長を前提として作られた建築基準法や都市計画法は、新築で建てることが前提とされていました。現在の様に少子高齢化し、床が余る時代が来ることは想定されていなかったのです。
国も数年おきに建築基準法や関連法規を改正し、既存ストック活用が円滑に進むように規制緩和を進めてきていますが、それだけでは次回の統計で1,000万戸を超える事が確実と言われる空き家問題を解決することは、到底難しいでしょう。とはいえ、検査を受けていない建物を、適法である前提で改修して良いとは国も言えない。大きなジレンマを抱えているので
す。
しかしそこにこそ、超えるべきルールがあると我々は考えています。今回の最終審では、建築、特に既存建物の改修の分野で法律の枠組みを超えて行こうとする動きを起点に、これからの建築と都市の在り方についてここから議論を始めていきたいと考えています。
【プロフィール】
水野祐
弁護士(シティライツ法律事務所)。
Creative Commons Japan理事。Arts and Law理事。
慶應義塾大学SFC研究所上席所員(リーガルデザイン・ラボ)。
グッドデザイン賞審査員。
ITクリエイティブ、まちづくり分野のスタートアップや大企業の新規事業、経営企画等に対するハンズオンのリーガルサービスや先端・戦略法務に従事。
行政や自治体の委員、アドバイザー等も務めている。
著作に『法のデザイン -創造性とイノベーションは法によって加速する』、共著に『0→1(ゼロトゥワン)を生み出す発想の極意』、『オープンデザイン参加と共創から生まれる「つくりかたの未来」』など。
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神本豊秋
建築家(再生建築研究所)
1981年大分県生まれ。
2004年-2012年 青木茂建築工房にてリファイニング建築を学ぶ。
2012年より神本豊秋建築設計事務所設立、東京大学特任研究員として再生建築の研究と東京大学総合図書館の百年ぶりの大改修に取り組んでいる。
2015年より株式会社再生建築研究所設立。
検査済証未取得物件を適法にして検査済証未取得や居ながら耐震改修を軸に、「建築の不可能を可能に」をテーマに不可能と判断された建物を建築価値を向上させ再生してきた。
建築雑誌『KJ2018年12月号』にて特集。
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佐々木晶二
1959年生まれ、1982年建設省入省。1989年岐阜県都市計画課長。
1995年建設省都市計画課課長補佐の時に、阪神・淡路大震災に直面し、被災市街地復興特別措置法を立案。
兵庫県まちづくり復興担当部長、内閣府防災担当官房審議官を経て、一般財団法人民間都市開発推進機構上席参事兼都市研究センター副所長、国土交通政策研究所長を歴任。
2017年退職。
著書に『いちからわかる知識&雑学シリーズ 都市計画のキホン』(ぎょうせい,2017)、『最新防災・復興法制』(第一法規、2017)、『政策課題別都市計画制度徹底活用法』(ぎょうせい,2015)がある。
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佐久間悠
一級建築士(建築再構企画)。
1977年神戸市生まれ。
「建物の法律家」という肩書きで違法建築の改修設計を専門に行う。
設計はもちろんビルオーナー、デヴェロッパー、銀行等他業種との調整業務の専門家。
耐震改修をはじめ、カーテンウォールの設計や確認申請を出しての大規模改修も得意としている。
第2回「これからの建築士賞」受賞(2016年)。
著書に『建物改修・活用のための建築法規』(学芸出版社)、監修書に『知っておきたい! 最新 図解建築基準法と消防法のしくみ』(三修社)がある。
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日程 / 2019年2月3日 (日)
時間 / 18:00~19:30 開場 17:30~
料金 / 4,200円(書籍代2,700円+入場料1,500円) or 2,000円(入場料のみ)(税込)
定員 / 50名様
会場 / 本店内 小教室