2019年3月21日(木)

『海を撃つ――福島・広島・ベラルーシにて』(みすず書房)刊行記念 安東量子 × 小松理虔トークイベント「私たちは何を失ったのか、何を見ないできたのか」

広島で生まれ育ち、福島県いわき市で原発事故を体験した著者(安東量子さん)による初の単著『海を撃つ』の刊行を記念して、小松理虔さんと対談の機会を設けます。
(以下の開催趣旨は安東量子さんに執筆いただきました。)

安東量子

この3月で東日本大震災と原発事故から8年目を迎えます。
この8年の間に、様々な出来事があり、多くのことが語られてきた一方で、風化が進んでいる、もうあの事故のことは忘れ去られようとしていると言われています。震災当時は子供で、あの頃のことはよく知らないという世代も増えてきました。
今まで被災地はどこも、私もそうですが、「復興」に向かって走り続けてきました。そして、とりわけ原発事故と放射能についての言葉はあふれました。多すぎるほどの言葉があふれ、それに嫌気がさし、距離を取るようになった人も少なからずいることでしょう。
けれど、ふっと振り返ってみたとき、私たちはいったいどこに向かってきたのだろう、なにを話してきたのだろう、そんな感慨に襲われることがあります。
これだけ多くの言葉があふれたのに、本当に大切なこと、というよりも、なにが本当に大切であったのかさえ、私たちは話してこなかったのではないか。どこへ向かうかの道標さえなく、それを見いだすことさえ忘れ、ただあの時のただならぬ昂ぶりの中から吹き上がった激情のままに、突っ走ってきたのではないか、そんな気がしてなりません。
8年を経て、当時の激情も昂ぶりもすでに過去のものになりつつあります。被災地では、インフラの整備は概ね完了しつつあります。その傍らに、福島では、いまだ避難解除のかなわない地域があり、避難解除はなされたものの先行きを見通すことに苦労している地域があります。原発の廃炉作業も少しずつ進んではいますが全容は見通せず、対応に苦している事柄も少なからずあります。
状況は落ち着いたようでいて、まだなにも終わっていない。
私の著書『海を撃つ』では、私個人の経験と視点を通してこの8年間を描くと同時に、そこにあった、報道などではあまり語られることのなかった、原子力災害後の人々の暮らしのことを、震災と原発事故のことを知ってはいるけれど、強い関心を持たないで来た方たちにも伝えたいと思いました。
これまで見過ごされてきたもの、私たちが見ないで来たことを、拾い上げたいというのが願いでした。

私と同じ福島県いわき市に住む小松理虔さんは、私とはまったく違うアプローチで、同じように震災後の経験を『新復興論』にまとめ、先だって第18回大佛次郎論壇賞を受賞されました。
私たちは、互いに互いの存在は知っていましたし、すれ違う機会は多くありましたが、顔を合わせる機会は多くなく、小松さんとちゃんとお話しするのは、今回が初めてのことになります。
二人とも研究者でもジャーナリストでも、文筆家でもありません。たまたま震災と原発事故に遭遇し、偶然の出会いと半分以上は勢いで(きっと小松さんもそうだと推測して)、それぞれのフィールドで動き続けることになりました。
その二人で、これまで語られることの少なかった、震災後の私たちが見落としてきたもの、そして、失ってしまったものについて、語り合う時間を持ちたいと思います。
震災と原発事故の復興の流れから取り残された「落としもの」を拾う作業を通じて、これまでの「危険/安全」と言ったお決まりの閉じた言説から離れ、より遠い人へ、より異なる人へ、より未来へ、言葉を届ける機会になることを願っています。

【参加条件】
代官山 蔦屋書店にて、いずれかの商品をご予約・ご購入頂いたお客様がご参加いただけます。
・書籍海を撃つ+イベント参加券セット 3,200円(税込)
・イベント参加券 1,500円(税込)

【お申込み方法】
以下の方法でお申込みいただけます。
①代官山 蔦屋書店 店頭 (1号館1階 レジ)
②お電話 03-3770-2525 (人文フロア)
③オンラインストア

【対象商品】
・書籍『海を撃つ』(みすず書房2,916円/税込)+イベント参加券(284円/税込)セット 3,200円(税込)
・イベント参加券 1,500円(税込)

【ご注意事項】
*参加券1枚でお一人様にご参加いただけます。
*イベント会場はイベント開始の15分前からで入場可能です。
*当日の座席は、先着順でお座りいただきます。
*参加券の再発行・キャンセル・払い戻しはお受けできませんのでご了承くださいませ。
*止むを得ずイベントが中止、内容変更になる場合があります。

安東量子(あんどう・りょうこ)
1976年広島県生まれ。
18歳まで広島に育つ。2002年から福島県東白川郡、2004年からいわき市の山間に住む。自営業(植木屋)。
震災後、地元の有志とボランティア団体「福島のエートスETHOS IN FUKUSHIMA」を設(2011年12)、主宰。SNSやメディア、国内外の場で発信し、対話集会の運営に参画。共著に『福島はあなた自身──災害と復興を見つめて』(福島民報社、2018)。

小松理虔(こまつ・りけん)
1979年福島県いわき市小名浜生まれ。
ローカルアクティビスト。いわき市小名浜でオルタナティブスペース「UDOK.」を主宰しつつ、いわき海洋調べ隊「うみラボ」では、有志とともに定期的に福島第一原発沖の海洋調査を開催。
初の単行本著書である『新復興論』が第18回大佛次郎論壇賞を受賞。共著に『常磐線中心主義ジョーバンセントリズム』(河出書房新))、『ローカルメディアの仕事術』(学芸出版社)ほか。

会期
2019年03月21日(木)

時間
19:30~21:00

定員
70名

場所
蔦屋書店1号館 2階 イベントスペース

主催
代官山 蔦屋書店

共催・協力
みすず書房

問い合わせ先
03-3770-2525

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