世界的な建築家、槇文彦さんの最新刊『アナザーユートピア』が刊行されました。
都市におけるオープンスペースの価値への再考を促した、槇さんの論考「アナザーユートピア」にたいして、建築家、都市計画者のみならず、弁護士、社会学者、美学者等さまざまなジャンルの執筆者17名が応答した一冊です。
本イベントでは、槇さんにくわえ、建築家の塚本由晴さん、キュレーターの藪前知子さんをお呼びして、オープンスペースにおけるコミュニティとそのメンバーシップという切り口でトークを行います。
槇さんは、原っぱを核にして作られた夏だけのコミュニティである軽井沢の南原文化会が、80年、4世代にわたって継続していることをとりあげ、オープンスペースの存在こそが、そのコミュニティの紐帯となっていると指摘します。
塚本さんは、オープンスペースも建築同様に「施設化」され、管理が強まっていく傾向があることから、フルオープンのパブリックという一種の民主主義的な理想にたいして疑念を呈し、メンバーシップの概念の再考をはかることを問題提起されています。
キュレーターの藪前さんは、昨今の「パブリックアート」や「アートプロジェクト」の事例から、アートの実践が、コミュニティでありながら公共空間であり、クローズでありながらオープンである中間領域を出現させることに注目し、アートが生みだすオープンスペースの可能性を掘り下げます。
三者の議論が交錯するところから、「パブリック」でも「プライベート」でもない、あるいはその両方でもある、オープンスペースのあり方を掘り下げていきます。
【プロフィール】
槇文彦(まき・ふみひこ)
1928年、東京都生まれ。建築家、槇総合計画事務所代表。
東京大学工学部建築学科卒業、ハーヴァード大学大学院デザイン学部修士課程修了。
その後ワシントン大学、ハーヴァード大学、東京大学で教壇に立つ。
主な建築に、《ヒルサイドテラス》、《スパイラル》、《幕張メッセ》、《風の丘斎場》、《4WTC》など。日本建築学会賞、高松宮殿下記念世界文化賞、プリツカー賞、AIA(アメリカ建築家協会)ゴールドメダルほか受賞多数。
著書に、『見えがくれする都市』(共著、鹿島出版会)、『記憶の形象』(筑摩書房)、『漂うモダニズム』(左右社)、『残像のモダニズム』(岩波書店)など。
塚本由晴(つかもと・よしはる)
1965年、神奈川県生まれ。建築家、東京工業大学大学院教授。
貝島桃代と1992年にアトリエ・ワンの活動を始め、建築にとどまらず幅広い活動を展開。
近年はふるまい学を提唱し、建築を産業の側から人々や地域に引き戻そうとしている。
主な建築に《ハウス&アトリエ・ワン》、《BMW Guggenheim Lab》など。
著書に『メイド・イン・トーキョー』(鹿島出版会)、『コモナリティーズ』(LIXIL出版)など。
藪前知子(やぶまえ・ともこ)
1974年、東京都生まれ。東京都現代美術館学芸員。
アートと社会の関わり方を問いなおす、批評性のある展覧会に定評がある。
キュレーションの他に、『美術手帖』や「Webちくま」等に日本の近現代美術についての寄稿多数。
主な企画展覧会に「大竹伸朗 全景 1955-2006」、「山口小夜子 未来を着る人」、「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」、「MOTサテライト 2017春 往来往来」など。
「札幌国際芸術祭2017」では企画メンバーとして参加。
真壁智治(まかべ・ともはる)
1943年、静岡県生まれ。
プロジェクトプランナー、M・T・VISIONS主宰。
武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻修了。
「建てない建築家」を標榜し、都市、建築、住宅分野のプロジェクトプランニングに取り組む。
キュレーションに、建築絵本シリーズ「くうねるところにすむところ」、「建築・都市レビュー叢書」(NTT出版)など。
著書に、『アーバン・フロッタージユ』(住まいの図書館出版局)、『ザ・カワイイヴィジョン』(2巻、鹿島出版会)、『応答 漂うモダニズム』、『建築家の年輪』(ともに、共編著、左右社)など。
日程 / 2019年4月23日 (火)
時間 / 19:00~20:30 開場 18:30~
料金 / 1,500円(税込)
定員 / 110名様
会場 / 本店 大教室