2019.05.23 THU
19:00 – 21:00
「夢への誘い」 ――塚本昌則さんより
夢は、想像的なものがどれほど現実的なものとなりえるのかを教えてくれる。
どんなに荒唐無稽な場面であっても、夢みる人にとっては、差し迫った現実の出来事と感じられるのだ。
そして、それは個人の特殊な体験にとどまらず、他の人にとっても現実と感じられるような体験へと転換されていくことがある。
読書に熱中するとき、映画に見入るとき、翻訳を通して見知らぬ世界に入っていくように感じるとき、そこにはこの夢の働きを認めることができるのではないだろうか。
野崎歓さんは、著作『夢の共有』で、個人的なものであるはずの夢が共有されることによって、迷宮のような世界が出現することを明らかにした。
19世紀フランスの作家ネルヴァルの旅は、とりわけ書物に書かれた他人の夢を自分のものとし、その夢を作品のなかで現実の出来事として生きることで終わりのない探究を行った。
時に剽窃、模倣、書き直しと言われるまでに、ネルヴァルは多種多様なテクストを自在に引用し、他者とともに書くことで新たな世界を創造していったが、それは夢が個人の特殊なものであると同時に、共有されることで爆発的な創造力を発揮する力を秘めているからこそではないだろうか。
この夢の創造力が、翻訳、さらには映画においてもっとも印象的にあらわれている例をお話しいただきたい。
拙著『目覚めたまま見る夢』では、夢の創造力が発揮されるためには、何より注意力を凝らした、覚醒した状態にあることの重要性を強調した。
20世紀、ヴァレリー、プルースト、バルト、グラックなど、数多くの作家たちが「覚醒したまま夢を見ることはできるのか」という矛盾にみちた疑問に惹きつけられた。
それが具体的にどのような状態なのか、目覚めたまま見る夢にも、翻訳や映画のおもしろさに通じている部分があるのではないか。
『夢の共有』とクロスさせながら、テクストを産出する原動力としての夢について、そのさまざまな側面に触れてみたい。
――夢と創作の関わりにご興味のある方々と、楽しいひと時を共有できれば幸いです。
【開催日時】
2019年5月23日(木)
18:15 受付開始
18:30 開場
19:00 イベント開始
チケット代金1500円(ワンドリンク付き)
お電話でもお申込みを承ります。(03-6268-9064)
お電話でお申し込みの場合はイベント開催日とイベントタイトルをスタッフまでお申し付けください。
なお当日は、お早めにお越しいただけますとご案内がスムーズになります。
【主催】
神保町ブックセンター
【協力】
岩波書店
【注意事項】
・キャンセルをご希望される方への払い戻しは、5月21日19時までにご連絡いただいた方のみとさせていただきます。
・不参加による払い戻しはいたしかねます。
・イベントの録音動画撮影はお断りいたします。
塚本昌則(つかもと・まさのり)
1959年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科教授。
著書に『フランス文学講義――言葉とイメージをめぐる12章』(中公新書 2012年)、訳書に『パトリック・シャモワゾー『カリブ海偽辞典――最期の身ぶりによる聖書的物語』(紀伊國屋書店 2010年、第48回日本翻訳文化賞)、ポール・ヴァレリー『レオナルド・ダ・ヴィンチ論』(ちくま学芸文庫 2013年)など。
野崎歓(のざき・かん)
1959年生まれ。放送大学「人間と文化コース」教授。
著書に『ジャン・ルノワール 越境する映画』(青土社 2001年、サントリー学芸賞)、『赤ちゃん教育』(青土社 2005年、講談社エッセイ賞)、『異邦の香り―ネルヴァル『東方紀行』論』(講談社 2011年、読売文学賞)、『夢の共有――文学と翻訳と映画のはざまで』(2016年 岩波書店)、訳書にミシェル・ウエルベック『地図と領土』(ちくま文庫 2015年)、アンドレ・バザン『映画とは何か』上下(共訳 岩波文庫, 2015年)など。