東京国立近代美術館で「No Museum, No Life?―これからの美術館事典」が9月13日まで開催されています。本展は2度目となる日本の国立美術館5館のコレクションから成る展覧会です。テーマは「美術館そのもの」。美術館の機能や構造をAからZまでの36のキーワードで紹介、展示構成されています。
美術館の裏側を楽しみながら、その役割を考えられる貴重な機会ですが、展覧会というと、作家や時代に迫ったり、テーマに沿って作品を展示したりというのが一般的なイメージで、「美術館そのもの」がテーマとなっている本展を珍しく感じた人も多いのではないでしょうか。
欧米では美術館そのものが研究・批評対象とされ、批評家や美術家、建築家など幅広い人々が美術館そのものに大きな関心を寄せています。
日本は展覧会の動員数は世界トップクラスで、美術館数も約1000を越え、美術館・展覧会が好きな国であると言えるでしょう。しかし、絶え間なく開催される大型展に翻弄されたり、展覧会の動員数が大きな関心事になってしまったりと、じっくりと美術館に向き合う時間や場が少ないかもしれません。
今回は、美術館に面と向かうことができる本展の開催を機に、ゲストに批評家で、多くの展覧会レビューをされている浅田彰さんをお迎えし、本展企画者である桝田倫広さん(東京国立近代美術館)、新藤淳さん(国立西洋美術館)とともに、欧米の美術館との比較などから日本の美術館の現状や問題点に迫り、これからのミッションを考えていきます。
また、オリンピックの開催を控え、さまざまな政策が打たれる中、美術館はどのように応えていけばよいか、日本の美術館の未来を考える機会にもしたいと思います。
浅田 彰
あさだ あきら
批評家
京都大学経済学部卒業。京都大学経済研究所・准教授を経て、京都造形芸術大学大学院長就任。1983年、『構造と力』(勁草書房)を発表し、翌年の『逃走論』(筑摩書房)で提示した「スキゾ / パラノ」のパラダイムとともに、「浅田彰現象」とも呼ばれる「ニューアカデミズム・ブーム」を生んだ。その後、哲学・思想史のみならず、美術、建築、音楽、舞踊、映画、文学ほか多種多様な分野において批評活動を展開。著書に『構造と力』、『逃走論』のほか、『ヘルメスの音楽』(筑摩書房)、『映画の世紀末』(新潮社)、『20世紀文化の臨界』(青土社)など。
新藤 淳
しんふじ あつし
1982年広島市生まれ。国立西洋美術館研究員。2007年東京藝術大学大 学院美術研究科修士課程修了(西洋美術史専攻)。同年より現職。共著に『版画の写像学』(ありな書房、2013年)など。関係した展 覧会に「かたちは、うつる」(2009年)、「アルブレ ヒト・デューラー版画・素描展」(2010-11年)、「フェル ディナント・ホドラー展」(2014-15年)、 「No Museum, No Life?―こ れからの美術館事典」(2015年)など。
国立西洋美術館公式WEBサイト:http://www.nmwa.go.jp
桝田倫広
ますだ ともひろ
1982年東京都生まれ。東京国立近代美術館研究員。早稲田大学大学院文学研究科人文科学専攻美術史学コース博士後期課程単位取得退学。2010年10月より現職。関係した展覧会に「実験場1950s」(東京国立近代美術館、以下同、2012-13年)、「フランシス・ベーコン展」(2013年)、「あなたの肖像―工藤哲巳回顧展」(2013-2014年)、「高松次郎ミステリーズ」(2014-2015年)、「No Museum, No Life?―これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧 会」(2015年)。
東京国立近代美術館WEBサイト:http://www.momat.go.jp