07年に亡くなったドキュメンタリー映画作家、佐藤真。
32人の寄稿やインタビューと、佐藤自身のエッセイとを対話させることによって編まれた『日常と不在を見つめて』で、平田は、佐藤について、互いにシンパシーを抱き、二人が共通して目指していたものは「いちばん遠いリアル」だったとする。90年代〜00年代、問題が表面化していなかった時代に「日常」を見つめることで闇をあぶり出そうとした佐藤真と、佐藤が見つめた震災前の日本について語る。また、佐藤真が不在の震災後に大きく変化し、「下り坂」となった日本で、私たちはどのような意識を持ち続けていったら良いのか――新刊『下り坂をそろそろと下る』で綴った、これからの日本と日本人のあり方とは。
終了後、平田オリザ氏のサイン会を行います。
平田オリザ ひらた・おりざ
劇作家・演出家・青年団主宰。
こまばアゴラ劇場芸術総監督・城崎国際アートセンター芸術監督。
1962年東京生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。
1995年『東京ノート』で第39回岸田國士戯曲賞受賞。1998年『月の岬』で第5回読売演劇大賞優秀演出家賞、最優秀作品賞受賞。2002年『上野動物園再々々襲撃』(脚本・構成・演出)で第9回読売演劇大賞優秀作品賞受賞。2002年『芸術立国論』(集英社新書)で、AICT評論家賞受賞。2003年『その河をこえて、五月』(2002年日韓国民交流記念事業)で、第2回朝日舞台芸術賞グランプリ受賞。2006年モンブラン国際文化賞受賞。2011年フランス国文化省より芸術文化勲章シュヴァリエ受勲。
書籍情報
『日常と不在を見つめて
ドキュメンタリー映画作家 佐藤真の哲学』
00年代、震災前。〔見えない世界〕を映そうとした映画作家の格闘の記録。
『阿賀に生きる』『まひるのほし』『SELF AND OHTHERS』『花子』『エドワード・サイード OUT OF PLACE』などの映画作品や著作の多くで、《日常》と《不在》 にこだわり、90~00年代に潜む闇をじっくりとあぶり出したドキュメンタリー映像作家、佐藤真。佐藤が世を去って9年。映像作家であり、90年代後半の類稀な思想家とも言うべきその哲学を掘り下げ、今を「批判的に」見つめ、未来への足場を探ります。
【寄稿・インタビュー】(50音順)
赤坂憲雄、飯沢耕太郎、椹木野衣、諏訪敦彦、想田和弘、林海象、原一男、平田オリザ、松江哲明、 港千尋、村川拓也、森達也、森まゆみ、四方田犬彦ほか
『下り坂をそろそろと下る』
私たちは、そろそろ価値観を転換しなければならない。
待機児童問題・人口減少問題を根本的に解決するための方策とは?
若者たちが「戻りたい」と思える、自己肯定感の伴った「まちづくり」とは?
学生たちが誇りと自信を持って通えるような大学入試改革とは?
子育て中のお母さんが、昼間に子供を保育所に預けて芝居や映画を観に行っても、後ろ指をさされない社会、他者の権利に嫉妬するのではなく、「生活がたいへんなのに映画を観に来てくれてありがとう」と言える社会へ――。 大きな経済成長や人口増加を前提としない、あたらしい「この国のかたち」を模索する。
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