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スタッフ川代です。
あれは、高校二年生の頃だったでしょうか。
教科書に妙な文章が載っていました。何この変な話、と私は思いました。
一人の青年が、なんだかよくわからないけど怒って、そして、山に逃げ込んで、気づいたら虎になっちゃった、という話でした。
厳しいことで有名だった現代文のベテランの先生はその短い小説がとても好きみたいで、この文章の素晴らしさがわかるようにうんたらかんたら、と熱く語っていたのですが、私は全くもってその物語のよさがわかりませんでした。「は? なんで怒って虎になんの? 意味わかんねーんだけどウケる」と友達とケラケラと笑っていました。
今でこそ書店員なんかやっちゃいますが、私はその頃、遊ぶことで頭がいっぱいで、漫画や雑誌しか読まなくて、読書や文学の面白さなんかとは、無縁の生活をしていたのです。
そういうわけで、私は「尊大な自尊心」だの「臆病な羞恥心」だのと言われても、何が何だか、さっぱりわからず。
「はー、こんな話のどこが名作なのかねえ」とぶつくさ言っていたおかげで、現代文のテストは赤点スレスレでした。
ところが、です。
高校生だった頃から五年以上経ち、天狼院で働くようになり、ふと、書棚に「山月記」があるのが目に入りました。
あー、そういや高校のときこんなん教科書に載ってたなあ、と思い、読むと、やけに、ぐさぐさくる。びっくりするほど、ぐさぐさ刺さる。あれ? なんで私こんなにこいつの気持ちわかるの? 動揺してしまうくらい、主人公に共感していました。
そして、その中のたった一文が、私の心臓をぎゅっとつかみました。
「己の場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった」。
うおおおおおおおお!!! と、叫びたくなりました。
もう、なんというか、自分の自意識とかプライドとかが自分でもコントロールできないくらい大きくなって、自分が大したことない人間だとか、上には上がいるとか、努力はしたくないけど認めてほしいとか……。
なんだか、そういう自分の意地汚い感情を全部この李徴が代弁してくれたような気がして、ぐさっときてしまったのだと思います。
あの高校生の頃、どうしてこの作品のよさがわからなかったのか。
いや、逆に言えば、純粋で、プライドも何も気にしていなかったあの頃は、幸せだったのかもしれません。
大学生になって、社会人になって、就活したり、仕事したり、人と比べることが多くなったり。
将来に向けての不安が募ることによってどんどんいらないプライドが大きくなっていって、この李徴の気持ちがびしびしとわかるようになってきたのだと思います。
はあ〜〜〜、先生、あの頃、「わけわかんねえ」とか言っててごめんなさい。あのとき私、ちゃんと音読すればよかった。ちゃんとノートに書き写し、すればよかった。今更になっても、もう遅い。私は高校を卒業してしまっているし、国語の授業とかないし、ってか働いてるし学生じゃないし、もう二度と音読や書き写しなんかする機会なんてな……
な……?
……
あ!!!! あったわ!!!
天狼院でできるやん!!!!
と、いうわけで、完全なる私の「やりたいやりたい」という欲求のもと、文ラボ、開催でございます!!
高校の頃はわからなかったあの「山月記」のよさを、今こそ理解したい! というかた、私以外にもいらっしゃるんじゃないでしょうか?
とくに「刺さる」文章を集まったみなさんで「丸読み」して(各々が一文ずつ読み、句点「。」で次の人に交代になる、授業でよくあったあれです)、「ああ〜このとき李徴ってこういう気分だったんだよね」「今ならこの気持ちわかるわ」と熱く語り合うもよし。文章のリズムをしみこませるように、ゆっくりと読むもよし。
今、なかなか文章を音読することなんてありませんよね。やるとしたら家で一人でこっそりやるくらいしかないですよね。でも、実際、思い出すと、綺麗に読めたりすると結構気持ちよかったりしないですか? 本当に自分が書き手になりきったように、一言一言漏らさないように文章を読む。
そして、さらに、自分が気に入った文章を原稿用紙に書き写す。お気に入りの筆記具で。原稿用紙で。ゆっくり、写経をするように。
しかもすばらしいことに、「山月記」って、難しい漢字が多いんです。昔の中国の描写も所々に出てくるから、「ん?」と引っかかる箇所も結構ある。けれど、そういう難しい漢字も、一画一画丁寧に書き写していくと、なんとも言えない気持ちよさが湧き上がってくるのです。
「山月記」、教科書に載ってなかったよ、読んだことないよ、という方もいらっしゃるかもしれませんが、この機会に一度読んでみるのも、いいと思います。本当に名作です。なにせ、この前のファナティックグランプリの「最強の小説」特集で一位になったくらいですから、もう、お墨付きです。損はしないと思います。
実際のところ、私が一番楽しみにしている気がします。お気に入りのペンを持っていく予定です。
普段、忙しくて自分と向き合う時間がない、という方は、ぜひ。きっと集中して、心を落ち着かせられるだろうと思います。
コーヒーと、原稿用紙と、万年筆と、「山月記」。
土曜の午後の一時間半、ちょっと贅沢な過ごし方をしてみませんか。
【概要】
日時:5月14日(土)14:00〜15:30
▼コンテンツ
14:00〜14:10 自己紹介
14:10〜14:40 「山月記」をみんなで交代で音読しよう!
14:40〜14:50 休憩
14:50〜15:30 「山月記」を原稿用紙に書き写そう!
定員:20名様
参加費:1,000円+1オーダー
*加えて、店頭にて「山月記」をお買い求めください。すでにお持ちの方は必ずお持ちください。
*天狼院の原稿用紙「Mk-Ⅱ(マークツー)」をお買い求めのお客様は500円引きで参加いただけます。
*プラチナクラスの方は参加費半額(500円+1オーダー)でご参加いただけます。
*「月刊天狼院書店」編集部(読/書部)の方は参加費無料(別途1オーダー)でご参加いただけます。
場所:天狼院書店「東京天狼院」
*CLASS天狼院プラチナクラスについて→ 【破格の割引サービス】「CLASS天狼院」誕生〜最上ランク「プラチナクラス」は全店合計100名様限定〜《詳細・決済ページ》:http://tenro-in.com/tsushin/15866
*「月刊天狼院書店」編集部について→本好きの、本好きによる、本好きのための夢の部活「月刊天狼院書店」編集部、通称「読/書部」。ついに誕生!あなたが本屋をまるごと編集!読書会!選書!棚の編集!読書記事掲載!本にまつわる体験のパーフェクトセット!《5月1日創刊&開講/一般の方向けサービス開始》 http://tenro-in.com/zemi/19122
場所:天狼院書店「東京天狼院」
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