リービ英雄さんの最新刊『模範郷』は、そのほとんどが実話である。
1960年、10歳までの幼少期を台湾で過ごし、そこを〈故郷〉と長い間思ってきた。そこは、故郷でありながら、両親の不和を決定づけ、自分と家族のあり方を決定的に損なった場所でもある。そして、その複雑な感情は、台湾そのものの複雑な歴史と重なるようにして、半世紀の間、「ぼく」のその後を縛り付けてきた。
本書『模範郷』は、いわばそれへの決着の書となるはずだったが、「小説」という形をとることで、もしかしたら、いっそう事態は複雑になったのかもしれない……。
本イベントでは、1980年に台湾で生まれ、3歳のころに東京に引っ越してきた作家、温又柔さんをお迎えして、台湾を「故郷」にもち、異境の地で、日本語で、「故郷」を描く二人の作家に、台湾について、東京について、故郷について、縦横に語っていただきます。
温又柔(おん・ゆうじゅう)
作家。1980年、台湾・台北市生まれ。3歳の時に家族と東京に引っ越し、台湾語混じりの中国語を話す両親のもとで育つ。2006年、法政大学大学院・国際文化専攻修士課程修了。2009年、「好去好来歌」ですばる文学賞佳作を受賞。2011年、『来福の家』(集英社)を刊行。同年9月から白水社のHPで「失われた”母国語”を求めて」の連載をスタート。(2015年5月まで)2013年、音楽家・小島ケイタニーラブと共に朗読と演奏によるコラボレーション活動〈言葉と音の往復書簡〉を開始。同年、ドキュメンタリー映画『異境の中の故郷――リービ英雄52年ぶりの台中再訪』(大川景子監督)に出演。最新エッセイ集に『台湾生まれ 日本語育ち』(白水社)がある。
リービ英雄(りーび・ひでお)
作家・法政大学国際文化学部教授。1950年、カリフォルニア生まれ。少年時代を台湾、香港で過ごす。プリンストン大学とスタンフォード大学で日本文学の教鞭を執った。『万葉集』の英訳により全米図書賞を受賞。1989年から日本に定住。87年、「群像」に「星条旗の聞こえない部屋」を発表し小説家としてデビュー。92年に作品集『星条旗の聞こえない部屋』で野間文芸新人賞を受賞し、西洋人として初めての日本文学作家として注目を浴びる。『千々にくだけて』で大佛次郎賞、『仮の水』で伊藤整文学賞を受賞。他の小説に『天安門』『国民のうた』『ヘンリーたけしレウィツキーの夏の紀行』、エッセイ・ノンフィクションに『日本語を書く部屋』『英語でよむ万葉集』『大陸へ アメリカと中国の現在を日本語で書く』など多数。最新小説に『模範郷』(集英社)がある。
時 間 _ 19:00~21:00 (18:30開場)
場 所 _ 本屋B&B 世田谷区北沢2-12-4 第2マツヤビル2F
入場料 _ 2000yen(1500ticket + 500drink )