2017年1月12日(木)

園子温 × 新藤淳 女のちから、イメージのちから ~美術館と映画館で出会う、表現者の「ちから」 『アンチポルノ』公開 ×「クラーナハ」展開催記念企画

logo_abc100現在、東京・上野の国立西洋美術館で、「クラーナハ展―500年後の誘惑」が開催されています。また、2017年1月28日より「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト(※)」として撮影された、園子温さんの『アンチポルノ』が新宿武蔵野館をはじめ、全国で順次公開されます。

「クラーナハ展」『アンチポルノ』。絵画と映画というジャンルのみならず、時代や国、文化的背景も異なります。しかし、どちらからも「エロス」、「女のちから」、そして「イメージのちから」が見る者に襲いかかってきます。

クラーナハは16世紀にドイツで活躍をした画家で、裸体表現を発展させたと言われています。さまざまな主題を描きましたが、中でも、女性の身体的な魅力や性的な誘惑によって男性が堕落ないし破滅に陥る物語を好み、古代神話や旧約聖書、新約聖書、寓話などから、「女のちから(Weibermacht)」と呼ばれているテーマをくり返し採り上げました。彼が描く「女のちから」は不思議かつ妖艶で、時に恐怖をも漂わせます。

ロマンポルノは女のちからとイメージのちからが働き、鑑賞者を誘惑する映画であるといえるでしょう。『アンチポルノ』について、園さんは「センチメンタルな意味でのポルノは壊滅した。そんな中で女性の裸がどのように消費されるか、女性の権利と自由とは何かを考えて撮った」と言います。そんな想いで撮られた本作は、極彩色かつファンタジックな世界で、少女の妄想と現実が入り乱れる本作は、ストーリーだけでなく、視覚的に強烈なイメージが襲ってきます。

わたしたちは、これらの作品に対峙するとき、作品に漂う妖しさに知らず知らずのうちに、魅了されている自分がいることに気づくのではないでしょうか。果たして、画面の中の「女のちから」に惑わされているのか、それとも作品が放つ「イメージのちから」に誘惑されているのか。鑑賞者は2重の誘惑にどぎまぎするかもしれません。

では、女のちからとイメージのちからが重なる瞬間は、どのような時に訪れるのでしょうか。園さんと、そしてクラーナハはどのように作品の「ちから」を作り上げているのでしょうか。

今回は、園子温さんに『アンチポルノ』について、新藤淳さんに「クラーナハ」「クラーナハ展」についてじっくりとお話いただき、園さんの作品とクラーナハの作品が放つ「ちから」に迫りながら、映画監督と学芸員の視線で、「女のちからとイメージのちから」について深く掘りさげて考えていきます。
ジャンルも、時代も国も越えて、作品が持つ「ちから」はどこから来るのか、芸術の強さの根源を考える機会にもできたらと思います。

(※)ロマンポルノ・リブート・プロジェクトとは
日活株式会社が1971 年に製作を開始した「日活ロマンポルノ」が2016年に生誕45 周年を迎えたことと、50 周年へ向けた、新作製作と旧作の活性化をあわせた横断的なプロジェクト。新作制作では1971年当時の製作条件を、現在のフォーマットに置き換え、一定のルールの中で撮影するというロマンポルノの特質を引き継ぎ、園子温さんはじめ、塩田明彦さん、白石和彌さん、中田秀夫さん、行定勲さんの5人の超一流の監督が参加した。
ロマンポルノ・リブート・プロジェクト公式サイト

園子温 その・しおん
愛知県豊川市生まれ。園子温、本名である。
17歳で詩人デビュー。 「ユリイカ」「現代詩手帳」に続々と詩が掲載され、”ジーパンをはいた朔太郎”と称される。法政大学入学後、8mm映画を手掛ける。『男の花道』(1987年)でグランプリを受賞。ぴあスカラシップ作品として制作された16mm映画『自転車吐息』(1990年)は、ベルリン映画祭正式招待のほか、30を越える映画祭で上映。 2008年公開の『愛のむきだし』では第9回(2008年)東京フィルメックスにおいて観客の投票によって選出される「アニエスベー・アワード」を受賞。2011年には『冷たい熱帯魚』を公開。第67回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門に正式出品された。そして2012年公開の『ヒミズ』では古谷実の同名漫画を映画化、第68回ヴェネチア国際映画祭コンペティションに出品された。他にも『希望の国』(2012)『新宿スワン』(2015)『ラブ&ピース』(2015)『リアル鬼ごっこ』(2015)など、多数。
さらに2015年7月にはChim↑Pomキュレーションによる初の個展「ひそひそ星」展、さらにワタリウム美術館にて絵本「ラブ&ピース」の原画展を開催。同年9月にはChim↑Pom主催の「Don’t Follow the Wind」展(ワタリウム美術館)にて映像インスタレーションを発表、翌2016年にはワタリウム美術館での個展「ひそひそ星」を開催するとともに、同作は第40回トロント国際映画祭にてNETPAC賞(最優秀アジア映画賞)を受賞し、同年5月より劇場公開された。
園子温公式サイト

新藤淳 しんふじ・あつし
1982年生まれ。国立西洋美術館研究員。2007年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了(西洋美術史専攻)。同年より現職。 共著に『版画の写像学」(ありな書房)、『ウィーン 総合芸術に宿る夢』(竹林舎)など。展覧会企画(共同キュレーション含む)に「フェルディナント・ホドラー展」(2014-15年)、「No Museum, No Life?-これからの美術館事典」(2015年)、「クラーナハ展--500年後の誘惑」(2016-17年)など。
国立西洋美術館公式WEBサイト

概要
日程:2017年1月12日 (木)
時間:19:00~21:00 開場18:30
料金:1,944円(税込)
定員:110名様
会場:本店 大教室

お問合せ先
青山ブックスクール
電話:03-5485-5513
メール:culture@boc.bookoff.co.jp
営業時間:平日 10時~20時 土・日・祝休み
住所:東京都渋谷区神宮前5-53-67 コスモス青山B2F
青山ブックセンター本店内

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(店頭・電話・メールでも受け付けています)

関連情報
『ANTIPORNO(アンチポルノ)』
2017年1月28日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督:園子温
出演:冨手麻妙・筒井真理子ほか
小説家として時代の寵児となった女・京子。極彩色の部屋に籠もり、マネージャー典子が伝えるスケジュールを分刻みでこなす毎日。私は京子なのか?京子を演じているのか?虚構と現実の狭間で、京子の過去の秘密が暴かれていく―。園子温監督が贈るアナーキーな美しき問題作。
ロマンポルノ・リブート・プロジェクト公式サイト

「クラーナハ―500年後の誘惑」
【東京】 2016年10月15日(土)~2017年1月15日(日)
国立西洋美術館(東京・上野公園)
【大阪】 2017年1月28日(土)~4月16日(日)
国立国際美術館(大阪・中之島)
ルカス・クラーナハ、この画家の名を何よりも忘れがたいものにしているのは、ユディトやサロメ、ヴィーナスやルクレティアといった物語上のヒロインたちを、特異というほかないエロティシズムで描きだしたイメージの数々でしょう。艶っぽくも醒めた、蠱惑的でありながら軽妙なそれらの女性像は、当時の鑑賞者だけでなく、遠く後世の人々をも強く魅了してきました。
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