「妹島和世を通して、「私」が作品をつくるという行為が一体何なのか、深く知ること。それが本書の目的である」
ポストモダン以降を代表する、建築家・妹島和世。妹島の登場は、国家と軌を一にした建築(丹下健三)、社会批評としての建築(磯崎新)から、〈私〉に依って立つ建築へと、日本の建築史を新たな段階へとシフトさせた。しかし、その事態はいったい何を意味しているのか? 若き俊英が、妹島和世をつうじて、私たちが依って立つ地平を、現代の建築界が抱える問題を浮き彫りにする、野心的な一冊をものした。
本イベントでは、司会に「建築・都市レビュー叢書」キュレーター・真壁智治氏を、ゲストに建築批評家の五十嵐太郎氏をお招きして、「〈私〉時代の建築」をめぐって、討議を行う。
・「建築・都市レビュー叢書」(NTT出版)
21世紀の建築・都市についての議論を活発化させる、世代・分野を縦横断する、新しい地の「プラットフォーム」を生み出すことを目指している。通称R本。
服部一晃
1984年生まれ。2007年東京大学工学部建築学科卒業後、パリ・ラヴィレット建築大学に留学。その後、東京大学大学院難波和彦研究室を2010年に修了。現在、隈研吾建築都市設計事務所 (KKAA) 勤務。大学卒業制作の世界コンクール「Archiprix 2009」グランプリ受賞。共著に『建築家の読書塾』(難波和彦編、みすず書房)。
五十嵐太郎
1967年パリ生まれ。建築史・建築批評家。東京大学工学系大学院建築学専攻修士課程修了。博士(工学)。東北大学大学院教授。ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展2008の日本館コミッショナー、あいちトリエンナーレ2013の芸術監督、「3.11以後の建築」展のゲスト・キュレーターをつとめる。芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。著書に、『日本建築入門』(ちくま新書)、『忘却しない建築』(春秋社)、『現代日本建築家列伝』(河出書房新社)など、そのほか多数。
真壁智治
1943年生まれ。プロジェクトプランナー、「建築・都市レビュー叢書」キュレーター。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、東京拳術大学大学院美術研究科建築専攻修了。同大学助手を経てプロジェクトプランニングオフィス「M・T・VISIONS」主宰。「建てない建築家」を標榜し、広汎な知己力と旺盛な創像力を駆使して、戦略的視点に立つ都市、建築、住宅分野のプロジェクトプランニングに取り組む。2006年、建築家と取り組む「くうねるところにすむところ」シリーズで第2回武蔵野美術大学芦原義信賞を受賞。著書に、『アーバン・フロッタージユ』(住まいの図書館出版局)、『感応』(用美社)、『カワイイパラダイムデザイン研究』(平凡社)、『ザ・カワイイヴィジョンa』、『ザ・カワイイヴィジョンb』(ともに鹿島出版会)、『応答 漂うモダニズム』(編著、左右社)などがある。
概要
日程:2017年5月10日 (水)
時間:19:00~20:30 開場 18:30
料金:1,350円(税込)
定員:50名様
会場:本店内 小教室
お問合せ先
青山ブックセンター 本店
電話:03-5485-5511
受付時間:10:00~22:00
書籍情報
『妹島和世論――マキシマル・アーキテクチャーⅠ』
モダニズム、ポストモダニズムの流れを、突然「切断」するかのように現れた建築家・妹島和世。その発想の根底には「世界」と「私」の「亀裂」を丸ごと飲み込む姿勢があった。80年代生まれの気鋭が、妹島和世のテキストと建築作品を精緻に繙きながら、素手でつかみだしたスリリングな建築史。
「建築にとっての「私」の問題は、古臭いどころか、まだ十分に認識すらされていない新しい問いである。この問いは、建築が国家とともに生きた丹下健三の時代や、建築が社会批評として生きた磯崎新の時代には存在し得なかった。そもそも大量の人と金を投入しなければ実現しない社会的存在を「私」がつくるなどということは本来的に不可能であり、倫理的にもおこがましい行為だったのである。しかし、時代は変わり、大きな物語が力を失うのと同時に「私」たちが建築作品をつくるようになった。だからこそ「私」と作品との間に横たわる亀裂が、いま現実的な問題として私自身に降りかかってくるのである。」(本書より)