2018年、異なる二つの当事者活動のグループが本を出しました。1冊は、『ダルク回復する依存者たち』(ダルク編、明石書店)、もう1冊は『セックスワーク・スタディーズ』(SWASH編、日本評論社)です。
ダルクは、全国約80か所の施設で薬物依存症の回復支援に取り組んでいる、34年の歴史を持つ当事者活動。SWASHは、性風俗などで働くセックスワーカーの健康と安全のために活動する、設立20年の自助グループです。
ダルクの本は、「自助グループについての当事者研究の金字塔」(熊谷晋一郎評)と、SWASHの本は、「日本における当事者中心のセックスワーク研究を切り開く待望の書」(アムネスティ・インターナショナル評)という評価を得ています。
どちらの本も、当事者、つまり、薬物依存者やセックスワーカー(性風俗で働く人々)たちが経験してきたこと、活動してきたことを通じて、どうすれば自分たちが抱える問題を解決できるか考え、その結果を自分たちでまとめたものです。
ダルクとSWASHの関心に共通するものには例えば、薬物依存者やセックスワーカーの健康被害やリスクを減らすこと(ハームリダクション)、依存症からの回復や、社会の人々が当事者支援に期待する”自立”支援のこと、当事者のためのサービスや支援が”事業化”していくことに伴う問題や心配などいろいろあります。
いずれも根底にあるのは、どうすれば自分たちで問題を改善できるか、どうすれば周囲の人に関心や理解を広げられるか、どうすれば力になってもらえるかという問題意識です。こうした当事者活動の蓄積とその一環としての研究は、当事者を苦しめる法や制度、差別や偏見を圧倒し、当事者どうしを勇気づけ、状況を変えることにもつながってきました。
ダルクとSWASHの当事者活動の手法、実践、伝統、その経験と知恵は、課題を超えて多くの人に役立つはずで、それが私たちの活動が持続してきた理由でもあります。
人は誰もが何かの問題の当事者です。あなたは、自分の抱える問題や生きづらさをどのように解決していますか?きっと新しいヒントがみつかるはずです。
【プロフィール】
市川岳仁(いちかわたけひと)
Artist。基本的にコミュニティ難民。Takehitology 専攻。
今日もゴドーを待ちながら、当事者性と専門性、経験と科学の狭間を漂流中。
アディクションリカバリーのコミュニティ『三重ダルク』の主宰、ネパールでのソーシャルビジネスカフェ運営など。
2015年〜、なぜか保護司。
最近、共著で本を書きました(『ダルク- 回復する依存者たち』明石書店)。
私生活では、ゴールデンレトリバーの親。
春から立命館大学の博士課程院生。精神保健福祉士。
倉田めば(くらためば)
大阪ダルク ディレクター/Freedom代表。尾道市出身。
14歳の時から薬物を乱用し始め22歳で薬物依存のため初入院。
以降29歳まで4回の入退院を繰り返す。
20代の終わりに自助グループと依存症の回復施設につながり、クリーン(薬物を使わない生活)が始まり現在に至る。
大阪写真専門学校卒業。ヌードカメラマンとして東京で仕事をする。
1993年カメラマンの仕事をやめ薬物依存回復施設「大阪ダルク」を設立。
2002年、薬物依存症からの回復を支援する市民団体「Freedom」を多くの賛同者とともに設立。
最近では保護観察所に刑務所出所者の薬物再乱用防止プログラムのスーパーバイザーとして出向くことが多い。
ピア・ドラッグ・カウンセラー。精神保健福祉士。パフォーマンス・アーティスト。
共著「誰にも聞けなかったドラッグの話」ASK他
青山薫(あおやまかおる)
神戸大学国際文化学研究科教授。
専門は社会学・ジェンダー/セクシュアリティ・移住移民研究。
1995年、アジア女性資料センターのボランティアとして人身取引被害者支援に携ったことがきっかけで、移住セックスワークに興味を持つ。
2001年にエセックス大学社会学部博士課程入学。
2002年から2003年には、バンコックのEMPOWERとチェンライのSEPOM(帰国者支援団体)で、フィールドワークの一環としてボランティア。
これを基に博士論文を執筆した。
帰国後、大学非常勤講師、京都大学文学研究科特定助教などを経て現職。
2006年からSWASHの活動に研究者として協力している。
主著に『「セックスワーカー」とは誰か』(大月書店 2007)、Thai Migrant Sex Workers from Modernisation to Globalisation (Palgrave/Macmillan 2009)、Asian Women and Intimate Work (Brill 2014)(共編著)。
宮田 りりぃ(みやたりりぃ)
公益財団法人エイズ予防財団リサーチ・レジデント。
関西大学人権問題研究室非常勤研究員。1981年生まれのトランスジェンダー。
2009年頃からセックスワーカーの健康や安全のために活動するグループであるSWASHのメンバーとして、さらに2013年頃から男性とセックスする男性の性の健康増進のために活動するグループであるMASH大阪のスタッフとして、団体運営やイベント開催などに携わってきた。
現在は、両グループのスタッフを続けながら、主にトランスジェンダーやHIV/AIDSに関する調査研究に取組んでいる。
趣味はバンド活動とオカルト研究。
要友紀子(かなめゆきこ)
1997年、セックスワークの非犯罪化を要求するグループUNIDOSに参加。
1999年、SWASH創設メンバーとなり、2005年からSWASH代表。
共著書多数。
最近書いた論考は、「セックスワークを通して考える当事者論 ――個人的なことは政治的なことかつ個人的なこと」(新教出版社発行「福音と世界」1月号所収)、「当事者を搾取しないフェミニズムを考える」(日本女性学研究会女性学年報第39号所収)、「いかがわしくあってはいけない障害者の性――”差別撤廃”か”部分的権利保障”か」(ニュースサイトSYNODOS掲載)。
げいまきまき
元セックスワーカー。2011年頃からSWASH参加。
2016年から大阪堂山のMSM(男性とセックスする男性)の為のコミュニティセンターdistaのスタッフでもある。
2019年2月22日〜3月3日まで大阪北加賀屋でセックスワークをテーマにしたパフォーマンス公演&映像や音の展示&トークのアート企画展「have a nice day, sex worker」を行う(後援SWASH)
HP
ぽんぽんまる
パパとよばれたい複数で子育て中。世の中的にはシングル。
塩対応で接客した労働賃金で自分も子供も生活できている。
情報がない中で、当事者じゃない人からお門違いなバッシングをうけながらも少数派がどう生きるか闘ってきた人にしかわからない強みが私達にある。
そんな人たちの集まるイベントだから楽しみ。
<主催団体SWASHについて>
SWASHは、性風俗などで働くセックスワーカーが、「仕事をやっている限りは健康かつ安全に、また、辞めたい時にも健康かつ安全に辞められる」状況を目指して活動するグループで、1999年に設立。
ここでの「健康・安全」とは、身体的・精神的・社会的の三つの要素を含む。
メンバーは、現役/元セックスワーカーとそのサポーターで構成されている。
これまでの活動として、HIV/性感染症予防啓発やアウトリーチ、ホットライン、労働実態調査、風俗店オーナー研修のほか、 海外のセックスワーカーグループとのネットワーク構築や国際会議参加など、幅広い活動がある。
web
twitter
facebook
※このイベントは、文部科学省科学研究費 基盤研究(A)「トラウマとジェンダーの相互作用:精神病理・逸脱・創造性)」(代表:宮地尚子)によって助成されています。
会期 / 2019年02月02日(土)
定員 / 80名
時間 / 19:00~21:00(開場18:30)
講師/ゲスト / 市川岳仁 三重ダルク代表・倉田めば 大阪ダルク ディレクター/Freedom代表・青山薫 神戸大学・宮田りりぃ SWASH・要友紀子 SWASH代表・げいまきまき SWASH・ぽんぽんまる SWASH
場所 / 梅田 蔦屋書店 4thラウンジ
主催 / SWASH
参加費 / 無料
申し込み方法 / こちらからお申込みください
問い合わせ先 / SWASH→mail.swash@gmail.com・神戸大学 青山薫→kaoru@tiger.kobe-u.ac.jp