今夏、三菱一号館美術館にて幕末から明治に活躍した絵師 河鍋暁斎(1831-1889)とその弟子であるイギリス人建築家 ジョサ・コンドル(1852-1920)の師弟愛をしのぶ展覧会「画鬼・暁斎―KYOSAI 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル」が開催されます。暁斎の艶やかで、ユーモアにあふれ破天荒な画風は、当時より大変な人気を博していました。そんな暁斎の作品からは、わび・さびなどの簡素で閑寂な美しさでは語りえない、絢爛で型破りな力を感じることができます。
現代美術家の天明屋尚さんは、このように暁斎にみられる破天荒な美意識は古くは縄文時代から、幕末の浮世絵、さらには現代のデコ文化(デコトラ、デコバイクなど)やヤンキー文化まで脈々と受け継がれ、わび・さびに並ぶ重要な日本の美意識であるとし、その系譜を「BASARA(ばさら)」と総称し、新たな美術概念として提唱しました。自身も画鬼・暁斎に続くべく画強と名乗り、精力的に作品制作をされています。
コントユニット ラーメンズの片桐仁さんも、自身の作品から「BASARA」な美意識を醸し出します。1999年から粘土作品制作をしている片桐さんの作品は、「ペットボ土偶」や「鯛phone5」など、日用品をダジャレと粘土で覆い、ユーモアで笑いを誘いながらも、その見た目はおどろおどろしささえ感じられ、過剰に作りこまれた細部は鳥肌ものです。
今回は、そんな片桐仁さん、天明屋尚さんをお迎えし、お二人の作品制作に対する想い、それぞれの美意識に迫りながら、「BASARA」の系譜を辿ることで、日本の型破りな力を感じ、わび・さびだけではない絢爛で破格な日本の美しさの魅力を探っていきます。
また、近年、クールジャパンが声高にうたわれ、何かにつけクールであるとひとくくりにされてしまう中、改めて細部に宿る美意識に焦点を当てることで、通り一遍の言葉ではくくることができない日本の美の奥行きや創造力の混沌さ、さらにはコンドルが暁斎に惚れたように、洋の東西を超えて人々を魅惑させる日本独自の文化の力を考える機会にしたいと思います。
片桐 仁
(かたぎり・じん)
ラーメンズ
1973年生まれ。埼玉県出身。多摩美術大学在学中に小林賢太郎と共にラーメンズを結成。以後舞台を中心にテレビ、ラジオなど、様々な分野で活動している。
4月~5月にかけ舞台『ベター・ハーフ』に出演。 俳優業のかたわら、1999年より粘土を用いた造形作家としても活躍。現在も『FRIDAY』にて粘土作品の連載を行なっている。今までに作品集を2冊出版したほか、2013年4月には渋谷パルコミュージアムにて個展を開催。18日間で約13,000人を動員したほか、札幌パルコ、大阪UHA味覚糖本社でも個展を開催した。
天明屋 尚
(てんみょうや・ひさし)
1966年東京生まれ。現代美術家。
日本伝統絵画を現代に転生させる独自の絵画表現「ネオ日本画」を標榜。主な個展に、2014年「一筆入魂」パルコミュージアム(東京)。主なグループ展に、2003年「アメリカン・エフェクト」ホイットニー美術館(アメリカ、ニューヨーク)、2006年「ベルリン・東京展」ベルリン新国立美術館(ドイツ、ベルリン)、2010年「第17回シドニー・ビエンナーレ」ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館(シドニー、オーストラリア)、2010年「BASARA展」スパイラル(東京)を主催・企画・キュレーション、2014年「異形の楽園:池田学・天明屋尚&チームラボ」ジャパン・ソサエティ(アメリカ、ニューヨーク)。 主な受賞歴に、2003年「第6回岡本太郎記念現代芸術大賞展」優秀賞受賞。
その他に、ファッション誌「SENSE」に誌上芸術として連載中、2006年「FIFA Official Art Poster 2006 FIFA World Cup Germany」制作、2006年ドキュメンタリー映画「≒天明屋尚」出演。
天明屋尚WEBサイト:http://tenmyouya.com/
展覧会情報
画鬼・暁斎-KYOSAI 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル
2015年6月27日(土)~9月6日(日)
*前・後期展示替えあり(前期8月2日まで/後期8月4日から)
三菱一号館美術館
http://mimt.jp/kyosai/