2015年6月20日(土)

グランギニョル未来と考える“見に行くことができない”展覧会「Don’t follow the Wind」の企て

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椹木野衣トーク&レクチャーシリーズ「震災以後の世界~ジャンルの破壊と溶解。創造の地平を目指して」の最終回となる今回は、福島の帰還困難地域で開催中の“見に行くことができない”展覧会「Don’t follow the Wind」展を記念して開催します。ゲストは本展参加作家で椹木さんもその一員であるユニット「グランギニョル未来」の赤城修司さん、飴屋法水さん、山川冬樹さんです。

グランギニョル未来は、椹木野衣さんと演出家の飴屋法水さんによって構想されたユニットで、昨年は横浜でユニット名と同名の《グランギニョル未来》の公演を行いました。実際にあった飛行機事故をもとにした本公演は、数分でチケット完売という大変な人気ぶり。そんなグランギニョル未来がこのたび、新たなメンバーを迎え、「Don’t follow the Wind」展の開催をきっかけに活動を再開しました。

「Don’t follow the Wind」は震災からちょうど4年たった2015年3月11日に東京電力福島第一原子力発電所周辺の帰還困難地域でスタートした展覧会です。グランギニョル未来をはじめ、アイウェイウェイやchim↑pomなど国内外12組の作家が参加をしています。しかし、本展のことをもっと知りたいと思ってWEBサイトを覗いても音声が流れるばかりで、その全貌をつかむことができません。では、いざ行ってみようと思っても、帰還困難地域のどこで開催されているかも分からず、そもそもその一帯は封鎖中で立ち入ることができません。見に行くことができるのは、封鎖が解除になってから。それがいつになるのかは誰にもわかりません。

確かに今もどこかで存在し、開催しているけれど、まだ誰も見に行くことができない展覧会。展覧会なのに見に行くことができないとは矛盾をはらんでいるのではないかと感じる人もいるかもしれません。
では、‘見に行くことができない’ことに込められた想いとは一体何なのでしょうか。
また、本展から震災以後の展覧会やアートの役割や可能性をどのように考えることができるでしょうか。

今回は、グランギニョル未来のみなさんに「Don’t follow the Wind」で活動を再開した経緯から、本展への想いに迫ることで ‘見に行くことができない’展覧会の意味や役割を考えていきます。
また、グランギニョル未来の横浜公演から本展参加までの考えや表現の移りかわりを探るとともに、メンバーそれぞれの震災以前/以後での活動や表現の変化についてお話しいただくことで、震災以後の創造を考える機会にしたいと思います。

 

椹木野衣さんからのメッセージ
福島原発事故で引き起こされた大規模放射能汚染によって、収束のめどがないまま、立ち入り禁止となった広大な土地。いま、そのなかで「見に行くことができない」展覧会が始まっています。震災後、私はこの展覧会の実行委員となり、『後美術論』『アウトサイダー・アート入門』の執筆と並行して、その実現と運営にあたってきました。また、昨年に続きユニット「グランギニョル未来」を始動し、展覧会の出品作家としても、従来の批評家像を超えた立場から加わっています。この春、刊行された2冊の本とこの展覧会は、私のなかで密接に繋がります。第三回は、いまだ実体の見えないこの展覧会について、ユニットのメンバーをゲストに迎え話します。
椹木野衣トーク&レクチャーシリーズについて
2015年・春、東日本大震災後はじめてとなる美術批評家・椹木野衣さんの著書、『後美術論』(美術出版社)、『アウトサイダー・アート入門』(幻冬舎)が刊行されるとともに、椹木野衣さんもメンバーの一員であるユニット「グランギニョル未来(飴屋法水さん、赤城修司さん、山川冬樹さん)」が“見ることができない”展覧会「Don’t follow the Wind」への参加をすることで再始動しました。
このたび、そんな3つの刊行と再始動を記念し、椹木野衣さんのトーク&レクチャーシリーズ「震災以後の世界~ジャンルの破壊と溶解。創造の地平を目指して」を開催します。
それぞれの形態、内容、関わる人々は異なりますが、すべてにおいて「震災以後の世界」を念頭に置いたと椹木さんは言います。本トークシリーズでは、それぞれの書籍とプロジェクトを結合させることで、3つを貫く「震災以後の世界」をそれぞれの視点から掘り下げて考えていきます。
Don’t follow the Windの公式WEBサイト:
http://dontfollowthewind.info/

 

赤城 修司

赤城 修司

(あかぎ・しゅうじ)

1967年、福島県生まれ。高等学校美術教員。
1989年、筑波大学芸術専門学群洋画コース卒業。
1994-96年、青年海外協力隊員としてブルガリアに滞在、美術教師として活動。
2005-08年、 『福島民友新聞』紙上で4コマ漫画「週刊トホホ育児日記」を連載。
2008-10年、新制作展に絵画作品を出品。
2012年-2013年、『中国新聞』紙上で、「トホホ福島日記」(以降不定期)
2012年-2013年『毎日RT』紙上で、ツイートを元にした写真とテキスト「From Fukushima」を毎週連載。
2013年、「未来の体温」展(山本現代、アラタニウラノ 東京)に出品。
2014年、「Transmission」展(スタジオ35分 東京)に出品。
2014年、「Actinium」展(OYOYO 札幌)に出品。
2015年、写真集「Fukushima Traces, 2011-2013」出版(オシリス)
2015年、「Fukushima Traces, 2014-2015」展(スタジオ35分 東京)に出品。
2015年、「Don’t follow the wind」展に参加(グランギニョル未来として)

福島市在住

飴屋法水

飴屋法水

(あめや・のりみず)

1961年生。17才より唐十郎「状況劇場」の音響担当。23才で「東京グランギニョル」結成、演出家として独立。90年代よりレントゲン藝術研究所を基点に美術にも活動の場を広げ、95年より「動物堂」では動物の飼育・販売。99年「日本ゼロ年」展参加、05年「バ  ング  ント」展、演劇では、07年平田オリザ作「転校生」、10年「わたしのすがた」、11年夢の島での「じ め ん」、12年朝吹真理子との「いりくちでくち」、13年いわき総合高校の高校生たちとの「ブルーシート」、自身の家族3人での「教室」、14年椹木野衣・山川冬樹との「グランギニョル未来」、15年山下澄人原作「コルバトントリ、」などを上演。また大友良英など音楽家との共演も多数。

山川冬樹

山川冬樹

(やまかわ・ふゆき)

ホーメイ歌手 / 現代美術家。自らの声・身体を媒体に視覚、聴覚、皮膚感覚に訴えかける表現で、音楽/現代美術/舞台芸術の境界を超えて活動。己の身体をテクノロジーによって音や光に拡張するパフォーマンスを得意とし、歌い手としては日本における南シベリアの伝統歌唱「ホーメイ」の名手として知られる。活動の範囲は国内にとどまらず、これまでに15カ国でパフォーマンスを上演。現在、東京都現代美術館の常設展示室にて、自身の代表作にあたるインスタレーション作品『The Voice-over』を、また同美術館企画『山口小夜子 未来を着る人』展にて新作を公開中。​

椹木野衣

椹木野衣

(さわらぎ・のい)

美術批評家。1962年生まれ。著書に『日本・現代・美術』(新潮社、1998年)、『シミュレーショニズム』(増補版・ちくま学芸文庫、2001年)、『戦争と万博』(美術出版社、2005 年)、『なんにもないところから芸術がはじまる』(新潮社、2007 年)、『新版 平坦な戦場でぼくらが生き延びること 岡崎京子論』(イースト・プレス、2012 年)、『後美術論』(美術出版社、2015年)など。現在、多摩美術大学教授。

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