シリーズ「美術館とコレクション」第1回
錦絵誕生250年記念
浮世絵専門美術館 太田記念美術館から学ぶ
浮世絵のABC
~職人たちのワザから迫る 錦絵という革命
「実はあの美術館の常設展を見たことがない」
「美術館に行くのは企画展がある時だけ」
「常設展ってどうやって楽しめばいいの」
そんな方に受講いただきたい、美術鑑賞&
美術館をさらに楽しむための講座シリーズです。毎回、
日本全国の美術館の所蔵品・コレクションから、
さまざまな作品やテーマをピックアップし、
それぞれの美術館の学芸員さんに、美術家や時代背景、
美術史における位置、
技術などさまざまな観点からレクチャーいただくとともに、
美術館のコレクションについてお話しいただくことで、
所蔵品と美術館への理解を深めていきます。
約1000以上もの美術館があるとされる日本。
そんな日本の美術館のコレクションは質・
量ともにアジアでは群を抜き、世界をみても引けを取りません。
美術館や展覧会というと、どうしても大型展に注目がいきますが、
実は、
所蔵品を間近に見ることができる常設展やコレクション展でも素晴
らしい逸品に出会えるのです。
また、コレクションする作品の選定、所蔵品の研究、保存、
発信も美術館の大きな役割です。
どのような作品をコレクションしているのか、
どのように常設展やコレクション展を展開しているのかを見ること
で、その美術館の特徴や姿勢を伺うことができるでしょう。
日本が誇る美術館の所蔵品を学ぶことで、より美術鑑賞を、
そして美術館を楽しむ機会にしたいと思います。
第一回について
シリーズ「美術館とコレクション」第1回目は浮世絵専門の美術館「太田記念美術館」の所蔵品・コレクションから「錦絵」を学びます。講師は同館主席学芸員の日野原健司さんです。
アメリカやヨーロッパの美術館が所蔵するコレクション展や、葛飾北斎や東洲斎写楽、歌川国芳といった有名な浮世絵師の回顧展など、大規模な浮世絵の展覧会は、年に数回、さまざまな美術館で開催されています。展覧会の時期になると、新聞やテレビ、雑誌はこぞって取り上げ、大勢の人々の話題を集めることになるのはご存知のとおりです。
それでは、一年間を通じて浮世絵を展示している太田記念美術館の場合、どのようなコンセプトで浮世絵を展示しているのでしょうか?小規模な美術館であるため、たくさんの作品を並べることはできませんし、保存の関係上、有名な作品だけを展示し続けるわけにもいきません。所蔵するコレクションの魅力を新たに見出し、大規模な美術館では開催しづらい、専門館ならではの切り口による展覧会を企画しなければならないのです。
この夏、太田記念美術館では、「錦絵誕生250年記念 線と色の超絶技巧」という展覧会が開催されます。錦絵とは、多色摺木版画の技術によって制作された色鮮やかな浮世絵のことを指し、今年は錦絵が誕生してからちょうど250年という節目の年にあたります。錦絵の制作技術がどのように生み出され、また、彫りや摺りのテクニックがどのように発展していったかにスポットを当てるこの展覧会は、まさしく浮世絵の専門美術館だからこそ掘り下げることのできるテーマと言えるでしょう。
今回は、「線と色の超絶技巧」展の出品作を中心に、錦絵誕生の経緯や彫りや摺りといった技術的な側面から、浮世絵鑑賞の基礎知識をご案内していただきます。それと同時に、浮世絵専門館だからこそ語ることのできる、展覧会企画の裏事情についてもお話しいただく予定です。
日野原健司さんより
今年は錦絵が誕生して250年。錦絵は、絵師だけの力ではなく、摺師や彫師の協力があって完成する、言わば一級の工芸品です。浮世絵はさまざまな美術館でしばしば展示されていますので、目にする機会も多いと思いますが、ぜひ制作技法にも着目していただいて、新たな浮世絵の魅力を発見していただければと思います。
また、美術館がどのようにコレクションを研究し、展示を企画しているかについてもお話いたします。美術館の活動や展覧会の裏側に興味がある方もお楽しみいただけるかと思いますので、是非お気軽にご参加下さい。
太田記念美術館について
太田記念美術館は、東邦生命保険相互会社会長を務めた五代太田清藏(1893~1977)のコレクションを基礎として、昭和55年(1980)、東京都渋谷区神宮前に開館した、東京で唯一の浮世絵専門美術館です。
約14,000点にものぼる大規模なコレクションは、浮世絵の初期から末期にいたるまでの代表作品を網羅しているだけでなく、色目の美しい、保存状態に優れた作品が多く含まれていることが特徴です。そのコレクションに基づき、毎月さまざまなテーマで展示が行なわれています。
公式サイト:
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/index.html
【展覧会情報】
錦絵誕生250年記念 線と色の超絶技巧
前期:2015年8月1日(土)~8月30日(日)
後期:2015年9月4日(金)~9月27日(日)
日野原 健司
ひのはら・けんじ
1974年千葉県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科前期博士課程修了。太田記念美術館主席学芸員、慶応義塾大学非常勤講師。
江戸から明治にかけての浮世絵史、ならびに出版文化史を研究。太田記念美術館にて、「江戸園芸花尽し」、「没後120年記念 月岡芳年」、「北斎と暁斎―奇想の漫画」、「江戸妖怪大図鑑」などの展覧会を担当。
著書に『浮世絵でめぐる江戸の花―見て楽しむ園芸文化』(共著、誠文堂新光社、2013年)、『謎解き浮世絵叢書 月岡芳年 風俗三十二相』(二玄社、2011年)。
概要
- 日程
- 2015年8月21日 (金)
- 時間
- 19:00~21:00
開場 18:30~ - 料金
- 2,700円(税込)
- 定員
- 45名様