2020年1月19日(日)

飛ぶ教室 第3回 朴裕河『帝国の慰安婦』

2020.01.19 SUN
11:00 – 15:00

2019年3月で明治学院大学を退官された作家の高橋源一郎さんが、旧ゼミ生と一般参加者とともに、著者を招いて毎回1冊の本を読み解く「飛ぶ教室」が神保町ブックセンターを会場にスタートしました。
第3回は2020年1月19日(日)、対象となる書籍は朴裕河さんの『帝国の慰安婦』(朝日新聞出版)です。

「飛ぶ教室」開設のことば
この三月、わたしは、十四年勤めた大学を定年退官しました。大学には、素晴らしいところも、そんなに素晴らしくないところも、それから、 とても残念なところもありました。あらゆる場所がそうであるように。

では、大学の「素晴らしいところ」とは何でしょうか。他の誰かとともに、自由に、 自分自身とそれから自分以外の何かのために、何かを学ぶことができることです。「他の誰か」が欠けても、「自由に」が欠けても、「自分自身とそれから自分以外の何かのために」が欠けても、ほんとうには学んだことにならないのではないか。わたしは、大学にいる間、そんなことをずっと考えていたのでした。そして、 大学が、その「素晴らしいところ」 を少しずつ失っていくように見えることを、悲しく思ってもいたのでした。では、わたしにできることは何だろう。

やがて、わたしは、いつか大学を去る日が来たら、そのときには、大学ではないどこかに、大学の「素晴らしいところ」を持った場所を作りたいと思うようになりました。そして、その場所を、仮に「飛ぶ教室」と呼んでいたのでした。

ドイツの作家、エーリッヒ・ケストナーは、彼の理想の学校を「飛ぶ教室」と命名しています。それは「漂流する、漂う」 教室であり、また同時に、ほんとうに「空を飛んで、どこかに行ってしまう」教室でもありました。おそらく、それは、教師と学生を乗せて、この世界の果てを目指す教室の意味だったのでしょう。ケストナーがこの理想の学校について書いたのは、ナチスが政権を握り、自分の作品が図書館から撤去された頃のことだったのです。

「飛ぶ教室」は、まず、東京神田から、わたしの(旧)ゼミ生諸君を交えてスタートします。一月か二月に一度、 この時代を理解するために必要だとわたしが考えている一冊の本を 選び、参加する全員で読み解きます。そこには、著者本人にも来ていただく予定です。

では、ボン・ヴォヤージュ! 良き旅を!

2019年4月10日

高橋源一郎

第3回(レッスン3)
いま日本と韓国の間には、深く大きな断絶が広がっています。国家と国家の間で、政府と政府の間で、そして、人々の間でも。
しかし、この事態は突然やって来たのではありません。
その前には、長く、複雑な歴史の葛藤があったのです。そもそも、日本の文化は、古代から続く朝鮮半島との交流の歴史がなければ存在できませんでした。朝鮮半島に住んでいた人々は、わたしたち日本人のルーツの一つでさえあったのです。同時に、そこには、日本と日本人による侵略の歴史もありました。そして、とりわけ1910年の朝鮮併合以来、新たな問題が生まれたのです。従軍慰安婦問題や領土問題、そして請求権問題。それらの背後にひそむ「日本と韓国(朝鮮)との歴史問題」は、残念ながら解決のめどさえ立っていません。
そんな中、朴裕河(パク・ユハ)さんが2013年に韓国で、2014年に日本で発表した『帝国の慰安婦』は、大きな話題を、いや、騒然とした反響を呼びました。誰にもできなかった解決へのみちすじを、この本は提示しようとしたからです。

わたしたちは、今回、その朴裕河さんをお招きし、彼女と共に『帝国の慰安婦』を読んでいこうと思います。そして、歴史を傍観者としてではなく、その時代に生きる者として、どう対峙してゆくのか。そのことを考えたいと思います。

参加される方は、『帝国の慰安婦』、そして、朴さんが書かれた『和解のために』(平凡社)を読んできてくださるようお願いします。

【開催日時】
2020年1月19日(日)11時~15時
10:15 受付開始
10:30 開場
11:00 高橋源一郎さんによる講義
12:30 休憩 ※ご飲食は喫茶コーナー、または店外でお願いいたします。
13:30 朴裕河さんによる講義&ディスカッション
15:00 終了予定

チケット代金2500円(ドリンク別)

チケット販売:12月23日(月)午前9時00分開始
イベントへの参加申し込みは、
①Peatixでの先着順

および

②店頭で専用用紙にご記入いただいた方の中から抽選

で承ります。

①Peatix枠:
先着順での販売・参加申し込み受付です。リンク先サイトよりお申込みください。

②店頭枠:
12月23日(月)終日店頭で専用用紙にご記入いただいた方の中から抽選を行い当選された方にのみ当店よりご連絡差し上げます。
※営業終了後、受付の順番には関係なく厳正な抽選を行います。

いずれの枠の席も、数に限りがございます。おひとり様のお申込みは1席のみとさせていただきます。お電話での受付は行いません。

【主催】
神保町ブックセンター

【協力】
岩波書店

【注意事項】
・キャンセルをご希望される方への払い戻しは、1月17日19時までにご連絡いただいた方のみとさせていただきます。
・キャンセルが出た場合のみ、追加分のチケットを1月18日午前10時よりPeatixサイトで販売いたします。
・不参加による払い戻しはいたしかねます。
・イベントの録音動画撮影はお断りいたします。

高橋源一郎(たかはし・げんいちろう)
1951年生まれ。作家。横浜国立大学経済学部除籍。 2018年3月まで明治学院大学国際学部教授。
今回の「飛ぶ教室」の前身にあたる高橋源一郎ゼミについては、
岩波新書『読んじゃいなよ! ――明治学院大学国際学部 高橋源一郎ゼミで岩波新書をよむ』に詳しい。

著書:『さようなら、ギャングたち』(群像新人長篇小説賞優秀作)、『優雅で感傷的な日本野球』(三島由紀夫賞)、『日本文学盛衰史』(伊藤整文学賞)、『さよならクリストファー・ロビン』(谷崎潤一郎賞)。ほかに『一億三千万人のための小説教室』『101年目の孤独』『大人にはわからない日本文学史』『ぼくらの民主主義なんだぜ』『丘の上のバカ ぼくらの民主主義なんだぜ2』など多数。

朴裕河(パク・ユハ)
1957年ソウル生まれ。韓国・世宗大学校国際学部教授。
慶應義塾大学文学部国文科卒業。早稲田大学大学院文学研究科日本文学専攻博士課程修了。同大学学術博士学位取得。

著書に、『反日ナショナリズムを超えて』(2005年、河出書房新社、日韓文化交流基金賞)、『和解のためにーー教科書・慰安婦・靖国・独島』(2006年、平凡社、大佛次郎論壇賞)、『帝国の慰安婦ーー植民地支配と記憶の闘い』(2014年、朝日新聞出版、アジア・太平洋賞特別賞、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。

チケットのご予約はこちら

イベント情報の詳細はこちら