【ジュンク堂 難波店】
2016年2月11日(土・祝) 15:00開演
現代世界最高の人類学者による二一世紀の革命的古典、ついに翻訳登場!
〜デヴィッド・グレーバー『負債論———貨幣と暴力の5000年』(以文社)
刊行記念トーク〜
酒井隆史(社会思想史/大阪府立大学教授)
貨幣とはなにか? 信仰とはなにか? 国家とはなにか? 市場とはなにか? 資本主義とはなにか? わたしたちの存在とはなにか? そして、混沌期に突入した現代の先になにがくるのか? 古今東西の人文知の総動員によって構成されたユーラシア大陸5000年の歴史は、こうした問いにどう応じるのか? 訳者による『負債論』入門
■デヴィッド・グレーバー(David Graeber)
1961年、NYに生まれる。文化人類学者・アクティヴィスト(「われわれは99%だ」というスローガンの作成者)。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス人類学教授。訳書に『アナーキスト人類学のための断章』(以文社、2006年)、『資本主義後の世界のために』(以文社、2009年)など。
■酒井隆史(さかい・たかし)
1965年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科社会学専攻博士課程満期退学。
現在、大阪府立大学教授。専攻:社会思想史。著書に『自由論』(青土社、2001年)、『暴力の哲学』(河出書房新社、2004年)、『通天閣』(青土社、2011年)。訳書にジジェク『否定的なもののもとへの滞留』(共訳、ちくま学芸文庫)、ネグリ&ハート『帝国』(共訳、以文社)など多数。
■会場・受付 … 3階人文書売場特設会場。入場料無料(定員30名)
3階カウンターにて受付。電話予約可
ジュンク堂書店 難波店
TEL 06-4396-4771
『負債論 貨幣と暴力の五〇〇〇年』
D・グレーバー著 酒井隆史監訳
以文社 六〇〇〇円
本書が渉猟する五千年の人類誌は、我々の常識=思い込みを粉砕する。
「経済はまず物々交換から始まって、それを容易にするための『特別な商品』として貨幣が誕生した」という経済学の「常識」。鋳造貨幣がまず誕生し、それを代替するものとして仮想貨幣が生まれたとする貨幣史の「常識」。実際は、先に登場したのは、信用の証である仮想貨幣だった。
それは、人間が他者と共に、様々なものを他者に負ってのみ生きられる存在であるからだ。「社会とは、わたしたちの負債そのもの」なのだ。
その「負債」は、決して完済できるものではなく、また計算できるものではない。それが、仮想貨幣が媒介する「人間経済」であった。
戦争と略奪が「商業経済」をもたらし、鋳貨を生み出した。鋳貨は兵士に支払われる貨幣であり、略奪され、集中していく貨幣である。
仮想貨幣が一旦回帰する中世を経て、再び鋳貨が主役となる資本主義(「商業経済」―暴力―戦争―奴隷制)の時代が、アメリカ大陸の「発見」と資源の略奪によって始まる。
そして現代。IT時代を迎え、主役の座は、鋳貨から仮想貨幣に再び移ろうとしているかに見える。だが、その根底にあるのは相互信頼、相互扶助の「人間経済」ではなく、暴力・戦争と共にある「商業経済」であり、(返済を強制される)負債の連鎖である。そのミスマッチこそが資本主義の破綻を招来することを予想させながら、大著は終幕する。 (フ) (『書標』2017年1月号より)