宮木あや子さん・著「校閲ガール」がドラマ化される。今夜(10/5)から日テレで「地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子」というタイトルでオンエアだ。
原作ファンとして楽しみな反面、一抹の不安がある。それは主人公の河野悦子を石原さとみさんが演じるということ。原作では(続篇である「校閲ガール ア・ラ・モード」においても)、河野悦子が「美女」であるという描写は一切ない。ちょっと石原さとみさんはイメージから遠いのだ。ドラマの公式サイトに書かれたキャラ紹介にある「スーパーポジティブ」という単純な性格でもない……
石原さとみさんなら河野悦子よりも、原作では同期入社の帰国子女・元読モのファッション誌編集者(但し激務で今はボロボロ)森尾登代子のほうがイメージがマッチしているような(ドラマでは高校の後輩という設定が加わって、本田翼さんが演じている)。
あちこちの番組紹介記事を読む限り、どうやら原作とは別物のドラマとして楽しんだ方がよさそうな気が。ま、どちらにしても「重版出来!」に続く、馴染みのある業界モノとして楽しみではあるのだけれど。
校閲という職業は、出版関係に縁のない人にとってはその仕事内容が想像しにくい。番組WEBサイトでは、ざっくりこんなふうに紹介している(ホントにざっくり)。
作家さんによっては「校閲キライ」という人もいるという。「いちいち細かいことを指摘するな」とか「これは、わかっていてわざと書いてるんだよ!」とか。「校閲ガール」にもそんなシーンがあるし、「重版出来!」でも単行本6巻に校閲さんのエピソードが何編かあり、そういうシーンがある。
書き手のひとりとして言わせてもらえば、私はまったくそう思わないし、感じたこともない。校閲さんの「鉛筆」は校閲さんが自分の原稿をしっかり読んで、ちゃんとチェックしてくれていることの証拠だ。逆に、あとから自分で気がついた記述のミスに校閲さんのチェックが入っていないとがっかりもする(正確に言えば、校閲さんは「読んで」いるのではなく、書かれていることの意味を追って確認している)。
「鉛筆」というのは校閲さんのチェックのことで、編集さんのチェックは「赤字」という。鉛筆でチェックを入れるのは、先に書いたみたいに「チェックすべき事柄だけど作家がわざと書いている」部分などは、編集者が指摘を消しゴムで消すために「鉛筆」でチェックする。
編集さんの「赤字」は予想がつくことが多い。「ああ、やっぱりここ意味が伝わりにくいですよね」とか「ここ、伏線回収できてないですよね」とか。しかし校閲さんの「鉛筆」は思いも寄らないところから飛んでくる。つまり、その指摘は自分がまったく誤認している、勘違いしている部分、思い込みで書いてしまっている部分なのだ。だからその指摘はありがたいし、時にはびっくりして、しかも面白く、感動することすらある。
言霊(ことだま)をこの世に降ろすのが作家の役目だとしたら、黒子のように寄り添って、後ろからそっとアドバイスをくれるのが校閲さんなのだ。
「その霊じゃないですよ」と。
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