先週、金曜の夕方。高田馬場の芳林堂書店さんに立ち寄る。給料日後の週末。さすがに賑わいがあってちょっと嬉しくなる。今年の春先「本屋で.comに参加しませんか」とお声がけしようと思った矢先に自己破産のニュース。このまま廃業かと思っていたところ、書泉さんがお店を引き継いでくれた。
「クレジットカードのご利用を再開しました」との張り紙が貼ってある。スイカやパスモはまだ使えないけれど、間もなく使えるようになるとのこと。
30分くらい吟味して文庫二冊と新書一冊を手にレジへ向かう。文庫はカバーをかけてもらわないことが多いのだけど、芳林堂さんのカバーをかけた本を電車の中で読むのも、ささやかな応援になるかと思い、かけてもらうことにする。
書店員さんが「こちらのぱっちんバンドをお配りしています。お一つお選びください」と、なにやら見本らしきシートを取りだした。
(ぱっちんバンド?)
ああ、叩きつけると腕に巻き付くやつね。集英社文庫の夏のノベルティらしい。でもなんでぱっちんバンド?
「…… いえ、結構です」
「しおりにも使えますよ」
手早くカバーを掛けながら書店員さんがすかさずプッシュする。
ああ、そういうことか。しおりとして挟んでおいて、本を読んでる間は腕に巻いておけと(マジで?)。
「じゃあ…… このピンクのを」
「はい」
書店員さんはちょっと上目遣いで微笑むと、カウンターの下からピンクのぱっちんバンドを取りだしてカバーを掛け終わった本と一緒に袋に入れた。今日のオススメはこちらですよ、と言われて、ついもう一品頼んでしまった井の頭五郎のような気分になる。
会計を済ませて店内をもう一回りする。夏休みに入ったせいか、学生っぽいお客さんはあまりいない。仕事帰りのサラリーマンやOLさんが多いように見える。
駅前のビルだけど、路面店ではなく三階から五階の三フロア。このくらいの大きさのお店が一番難しいのかなぁ、と思う。一階のドンキホーテにはいつも人が溢れているけど。
帰りの電車の中で早速買った本を読み、地元の駅手前でぱっちんバンドを挟んで本を閉じる。本がぽこっと膨らむ。いやちょっと、しおりとして使うには無理がありそうな気がしますよ、集英社さん。
『これは経費で落ちません! 〜経理部の森若さん〜』青木 祐子・著
ツイッターでどなたかが薦めているのを見かけて、タイトルと装丁(表紙イラスト)がツボに来た。ツボに来た割には(芳林堂さんの集英社オレンジ文庫の棚が小さかったこともあるけれど)面陳になっていたのに自分はなかなか見つけられなかった。いいデザインであり、かつ店頭で目立つ装丁って難しい、と思う。
あとの二冊
『私のなかの彼女』角田光代・著(新潮社)
『戦争の社会学 はじめての軍事・戦争入門』橋爪大三郎・著(光文社)
角田光代さんは8月22日(月)福岡のRethink Booksさんで長嶋有さんとの対談イベントがあります。
長嶋有 × 角田光代 「書き続けるということ〜長嶋有小説家デビュー15周年企画〜」 『三の隣は五号室』(中央公論新社)刊行記念
橋爪大三郎さんは8月3日(火)三省堂書店 神保町本店さんで講演会があります。
橋爪大三郎先生 講演会 『戦争の社会学 はじめての軍事・戦争入門』(光文社新書)刊行記念
2016.08.02
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